研がれる私/長編エロティックミステリー
ワタシの巡るあなたの淵②



それに加え、私の心のどこかに、石神康友の存在が残っているのではないかと…

彼には、これ、とても辛いことだったと思う

私が石神のことは忘れた…、今じゃあ、なんとも思ってないと何百回唱えたところで、彼の自問自答がもたらす苦しみが消えようはずなどない
一方…、私の方も、彼をあの修羅場に引きこんでしまった結果として、あの人の片腕を失わせたことへの私の罪悪感と同情心から、彼は、ルイが自分を愛してるんじゃじゃないかと…

私にしたら、彼がそう思ってるのではと、それを勘ぐってる面もあって…

私も苦しい…

さらに、その私が苦しんでいる気持ちを汲んでるであろう自分を見る私のことが、彼には不憫でならないと…

まるで、アリ地獄のごとき負のスパイラルが、二人をじわじわと蝕んでる実際は認めていた

私も彼も…

これってループ?

自分たちが抱いている消し去れない予期が、”現実”という空間にドリルで抉り突くイメージ…


***


それでも二人は紛れもなく愛し合っていたし、そんな互いの心を慮りあうことを己の心の重荷にすることではあっても、隙間風が私たちの間に吹くことはなかった

このことは、自信を持って言える

そんな私たちが、日々、愛を紡ぎ合っていきながら辿り着いた心の底の行き先…

それは、相手を愛するが故、”苦しむ恋人”を”殺して”あげたい…

これを互いが願望し合う、”愛するカタチ”…

そう…、宮本ルイと石橋ミチヒロは、お互いに”そんな相手”を消し去ってあげたいという決心に歩み至ったの

それは終着駅ではなく、始発駅として

その敷かれるレールは”あの淵”だと分かっていはいるけれども…

でも、これだけは断言できる

愛し合うが故、二人に後戻りという選択肢は存在しなかった…、と…






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