研がれる私/長編エロティックミステリー
相互殺意③



石神康友と宮本ルイは、互いに殺意を抱きあう恋人同士のイカレたストーリーが、ここで本編に突入したことを確認あった

これより、一定の共通認識のもとではあるが、恋人間で展開する命の奪い合いをスタートさせる

下世話な言い方をすれば、さしずめ愛し合う者同士による”タマ取りゲーム”か…

それが、いよいよ幕開けとなった訳だ


***


「…じゃあ、開演の乾杯をしましょう。危険いっぱい、超刺激的な、私たち二人による自作自演作品のクランクアップを祈願して…」

私はそう切り出した

それを受けたカレは、またまた妖しいニヤリだった

”ひょっとして、いきなりまた何かをなの…?そうよ、もう油断は出来ない。本チャンは既に始まってるんだもの…”

咄嗟にそんな思いが頭をよぎった

しかし私は敢えてスルーを装った


***


「…何か注文して。ああ、前回は私と同じものってことだったわね。どうする?」

「今夜もだ。お前と同じものにしよう」

「じゃあ、私、キールにする」

さあ…、まずは、この後の康友の反応よ

開演に際した、いわば舞台挨拶のキャッチボールが成立するか否か…

言っとくけど、私は毒入りのボールを放ったんだし!

さあ、どうよ!


***


「ふふ…、お前はホント、いい感性してるな。ひょっとして今夜オーダーのスペルはよう、”Kir”じゃなくて”Kill”ってか?」

キターー‼

「そうね。相互殺意を抱き会う二人の門出だもの。今夜はさあ…、”キル”で行きましょう…」

この時、私もニヤリだったけど…

カレはどうやら、今までと違った不敵な笑みとしてに受け取ったようね

この人の顔には、そう書いてあったもの(薄笑)


***


「お待たせしました…」

しばらくして、長身の若い男性店員が”Kir”ならぬ”Kill”を、テーブルにツーグラス運んできた

そして赤紫の液体が納まったワイングラスを、私と正面のカレの前に置いた

静かに軽やかに…

だが…、店員がテーブルから去ると、その二つのワイングラスは一転して重々しいコントラストを醸していたわ

二人は一旦、目の前の”ソレ”に視線を落とした

おそらく私たちの眼が捉えた”ソレ”は、ワイングラスというよりも、その赤紫の”中身”だったはずだ

そして二人は、再び互いの瞳を喰い合うように視線を合わせた





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