逆転結婚~目が覚めたら彼女になっていました~
婚約破棄は許さない

 翌日。
 週明けはとても忙しく、週末の休みの分が溜まっていて朝から書類に追われている。
 外周りの営業も、先ずはメールチェックをして書類をまとめてから外へ出てゆくため、勤務開始から1時間程度は事務所内にいる。

 優衣里も部長の麗人から頼まれた書類をチェックして、社長室へ持って行く作業をしていた。


 勤務開始から30分ほど経過して、書類をまとめ社長室へ書類を届ける為、営業部を出て行った。


 書類をもって社長室へ歩いている麗人を後ろから、文彦が追いかけて来た。


 ガシッ! と肩を掴まれて、足をとめ振り向いた麗人。

 すると、すごい形相の文彦が間近にいてさすがの麗人も驚いた。

「おい、婚約破棄なんて許さないからな! 」
「はぁ? 」
「お前、俺から指輪も受け取っているじゃねぇか! 勝手な事を言ってんじゃねぇぞ! 」

 怒りを露にしている文彦からは、愛は全く感じられず、ただの憎しみや欲しか感じられなかった。
 愛しているから結婚したいってわけではない事がよく分かり、麗人は呆れたようにため息をついた。

「ごめんなさい。今ハッキリ分かりました。貴方は、私を愛しているから結婚したいわけじゃないのですね」
「な、なに言っている! 愛しているから結婚しようって、言っているに決まっているだろ! ふざけるな! 」
「ふざけているのどっちですか? 私に、保険金1憶もかけようとしているくせに」
「あれは、お前に保険金をかけて俺にもかけるつもりなんだ! お互い、何があるか判らないだろう? 万が一の時、高額な保険金があれば助かるじゃないか! 」
「それではなぜ、萩野さんとそんな話をしているのですか? そんな考えがあるなら、私と話すべきではありませんか? 」
「彩は、お前と友達だろう? だから、相談していただけだ! 」

 バシッ!
 肩に置かれた文彦の手を振り払った麗人。

「なぜ夫婦になる私に相談するより先に、友達だからと言って萩野さんに相談しているのか。私には理解できません」
「お前に相談しようとしたが、お前はいつもハッキリしないじゃないか! 口数だって少ないし。いつも、俺が話しふっているばかりじゃないか!」
「しかし、保険金などの問題は私とするのが道理です。それをしないと言う事は、貴方と私の間に信頼関係が無いという証です! 」
「なんだと? ふざけるな! 」

 バシッ! 
 文彦は麗人の頬をひっぱたいて来た!

 マジで痛い…。
 こんな痛みを平気で女性に与えることが出来るんだ、この男。
 さすが保険金目的で殺害まで企む奴だ。
 
 ひっぱたかれた頬を押さえて、麗人はじっと下を向いていた。
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