さよならしたはずが、極上御曹司はウブな幼馴染を赤ちゃんごと切愛で満たす
帽子を目深にかぶってサングラスをしていた男が、こちらを驚いたように見る。
その男は、颯太だった。彼は周りを気にかけながら、光莉に近づいてきた。
「あなたのことが気になってた。一応、謝ろうと思って」
「やっとの思いでここから出たのに、わざわざ言いに来たの」
光莉が呆れたように言うと、颯太はばつの悪そうな顔をして歩み寄ってきた。
「ひとりだけ足抜けしたみたいで、なんとなく後味が悪かったからね」
「あのあと、どうしていたか気になってたわ」
「一悶着はあったけど。すぐに解放されて晴れて自由の身だよ」
「そう。とりあえず……無事ならよかった」
光莉はほっと胸を撫で下ろした。見たところどこか大怪我をしているわけでもない。座敷牢がどうのという話をしていたので密かに心配していたのだ。あのままでは夢見が悪い。
「ちょっと待ってよ。あなたさ、お人よしすぎない? 俺はあなたを騙した人間だよ。あんな目にまで遭って……どうかしてるよ」
「もちろんあのことを許す気はないわ。でも、あなたにとっては雇用主に命じられれば、仕方なくやるしかなかった。『忍びの仕事』だったんでしょう。おそらくあなたも弱みを握られていたんだってわかったもの」
一瞬だけ見せた悲しい顔を、光莉はよく覚えている。そうでもなければ、颯太がひどいことをするような人ではないことも一緒にいて感じていたことだ。きっとあの蔵でのことも暴行するように命じられていたと思う。だが、彼は写真に撮ってふりだけで終わらせた。
「……そうだとしても、光莉さんを傷つけたのは事実だよ」
まるで颯太の方が傷ついたみたいだった。そんな彼を見ていたら責めることなんてできなかった。
「だいたい本当の悪人だったら、わざわざ謝りにきたりしないわ。一緒に過ごした時間すべてが嘘だなんて思えない。庭師の仕事も本当は好きだったんじゃない?」
颯太は困ったように笑った。
「逞しいのかお花畑なのか、よくわからない人だな。まあ、あなたのおかげで俺も自由になれたわけだし、一緒にいた時間が楽しかったのは本当だ。感謝してるよ」
きまりわるそうに、だが朗らかに颯太は言った。
縛られていた世界から解放された彼はどこか力が抜けていい表情をしているように思う。
「逞しくなんてないよ。私も今すぐ逃げ出したい。自由になりたい」
その男は、颯太だった。彼は周りを気にかけながら、光莉に近づいてきた。
「あなたのことが気になってた。一応、謝ろうと思って」
「やっとの思いでここから出たのに、わざわざ言いに来たの」
光莉が呆れたように言うと、颯太はばつの悪そうな顔をして歩み寄ってきた。
「ひとりだけ足抜けしたみたいで、なんとなく後味が悪かったからね」
「あのあと、どうしていたか気になってたわ」
「一悶着はあったけど。すぐに解放されて晴れて自由の身だよ」
「そう。とりあえず……無事ならよかった」
光莉はほっと胸を撫で下ろした。見たところどこか大怪我をしているわけでもない。座敷牢がどうのという話をしていたので密かに心配していたのだ。あのままでは夢見が悪い。
「ちょっと待ってよ。あなたさ、お人よしすぎない? 俺はあなたを騙した人間だよ。あんな目にまで遭って……どうかしてるよ」
「もちろんあのことを許す気はないわ。でも、あなたにとっては雇用主に命じられれば、仕方なくやるしかなかった。『忍びの仕事』だったんでしょう。おそらくあなたも弱みを握られていたんだってわかったもの」
一瞬だけ見せた悲しい顔を、光莉はよく覚えている。そうでもなければ、颯太がひどいことをするような人ではないことも一緒にいて感じていたことだ。きっとあの蔵でのことも暴行するように命じられていたと思う。だが、彼は写真に撮ってふりだけで終わらせた。
「……そうだとしても、光莉さんを傷つけたのは事実だよ」
まるで颯太の方が傷ついたみたいだった。そんな彼を見ていたら責めることなんてできなかった。
「だいたい本当の悪人だったら、わざわざ謝りにきたりしないわ。一緒に過ごした時間すべてが嘘だなんて思えない。庭師の仕事も本当は好きだったんじゃない?」
颯太は困ったように笑った。
「逞しいのかお花畑なのか、よくわからない人だな。まあ、あなたのおかげで俺も自由になれたわけだし、一緒にいた時間が楽しかったのは本当だ。感謝してるよ」
きまりわるそうに、だが朗らかに颯太は言った。
縛られていた世界から解放された彼はどこか力が抜けていい表情をしているように思う。
「逞しくなんてないよ。私も今すぐ逃げ出したい。自由になりたい」