さよならしたはずが、極上御曹司はウブな幼馴染を赤ちゃんごと切愛で満たす
「正攻法だけが正解じゃない。綺麗ごとじゃ大事な人を守れないことがよくわかったもの」
 律樹がどうして政略結婚を考えついたのかが今になってよくわかる。正攻法では修蔵には敵わないからだ。そして実際、修蔵は手強い相手だった。
 汚い手を使って陥れることを平気でする修蔵が、律樹に何をするかわからないと思うと怖い。修蔵の手に渡った我が子がどんなふうに利用されるかと考えるだけで悍ましい。
「愛しているからこそ守りたいの」
 律樹を守りたい。彼が光莉を守ってくれたように。そして、律樹と子どもを守りたい。それが、自分に今できる最良のことではないだろうか。その願いを叶えるためには、このまま常盤家に身を置いておくわけにはいかない。時間は、有限なのだから――。
「覚悟はできている? もしもあの人との子を妊娠しているということが知れたら、あなたは常盤家の次期当主の種を盗み出し、勝手にいなくなった誘拐犯っていうことにされるかもしれない」
 颯太は光莉を試すような目で見た。誘拐犯という言葉が胸にずっしりと重たく沈み込んでくる。
「きついこと言ってごめん。でも、そんなふうに当主はあなたから子どもを引き離すことくらい平気でするよ。そして、あなたが最も苦しむだろう残酷な手段を選んでくる。常盤修蔵はそういう人間だ」
「……そうね。そうでなくても、端からそうだったのよ。律樹さんさえいればいい、跡継ぎさえ残せばいい、そして私はいつか追い出される運命だった」
 光莉はハッとした。
「もしかして、それを知っているからこそ麻美さんは雄介さんとの子どもを作らない……いえ、時間稼ぎをしているの? 常盤家から追い出されないために?」
 子どもは道具だと、修蔵は考えている。都合のいいように選別するために愛人の子を住まわせているくらいだ。麻美に子どもが生まれれば、光莉と同じように修蔵の声ひとつで用済みの烙印を押される可能性はある。そのことをあの麻美なら察しているかもしれない。その刻限を引き伸ばすことで、最大限の恩恵を受けようということではないだろうか。実際、修蔵は雄介を跡継ぎにするという考えはないようだ。
「そうだよ。正直者が馬鹿を見る世界だよ。光も何もない闇の中。呼吸するのだけで精一杯の世界だ」
 颯太は苦虫を噛み潰したような顔をする。そして、最後の答えを求めた。
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