さよならしたはずが、極上御曹司はウブな幼馴染を赤ちゃんごと切愛で満たす
君を守りたい、救いたいという気持ち以上に、今はただ――君を愛している。
今は手放すしかない。だが、いつか君を取り戻すためならなんでもする。そう言ったら、君はどんな顔をしただろうか。結局、彼女の苦しそうな顔を見たら、何も言い出せないままだった。
◇8 さよならは未来のために
常盤家を出る当日――。
律樹に外まで送ってもらったおかげで、光莉はすんなりと邸の外に出られた。
(……ごめんなさい、律樹さん)
婚約指輪と靴は律樹に直接返した。彼が何も言わずに受け取ったのを見て、心臓が握り潰されそうな気持ちだった。
律樹がくれた指輪に今までどれほど励まされてきただろう。プロポーズしてくれたときは驚くほど嬉しかったし、律樹が不在のときには支えになった。
本当は思い出のひとつを持っていたいと思った。けれど、あの指輪や靴には彼の誠意や愛情が詰まっている。彼を裏切ってしまった光莉には持っている資格はないのだ。
シンデレラの魔法は解けた。
光莉は元の世界に戻らなければならない。
現実を生きるために、一日も早くここから離れなくてはいけない。
それでも――。
律樹の姿を目に焼きつけておきたくて、門の前で佇んでいる彼のことが気になって、一度だけ振り返った。
(律樹さん……りっちゃん)
離れたくない。愛してる。側にいたい。この期に及んで迷いが生まれてしまいそうになり、光莉は振り切るようにまっすぐに前を向いた。
行先の詳細は告げず、しばらく友だちのところに身を寄せるとだけ言っておいた。律樹にも修蔵にも常盤家の人間には誰にも知られるわけにはいかない。
光莉は常盤家から出たあと、しばらく歩いて様子を確認し、離れた路地裏で待機していた颯太に合流した。
誰かに尾行されていないか、盗聴器やGPSの類がついていないか、颯太が念入りにチェックをしてくれた。
万が一に追手を仕向けられたときのことを考え、東京から出る手段に電車やバスを利用せず、颯太の親方の名義で借りたレンタカーを使わせてもらうことになった。
目的の場所までは、東京から車でだいたい六時間程あれば到着するが、修蔵の動きが読めない今は、なるべく遠回りをしながら、数日かけて向かうようにした方がいいという颯太の提案に乗ることにした。
「本当にいいんだね?」
出発する直前、颯太が尋ねてきた。
今は手放すしかない。だが、いつか君を取り戻すためならなんでもする。そう言ったら、君はどんな顔をしただろうか。結局、彼女の苦しそうな顔を見たら、何も言い出せないままだった。
◇8 さよならは未来のために
常盤家を出る当日――。
律樹に外まで送ってもらったおかげで、光莉はすんなりと邸の外に出られた。
(……ごめんなさい、律樹さん)
婚約指輪と靴は律樹に直接返した。彼が何も言わずに受け取ったのを見て、心臓が握り潰されそうな気持ちだった。
律樹がくれた指輪に今までどれほど励まされてきただろう。プロポーズしてくれたときは驚くほど嬉しかったし、律樹が不在のときには支えになった。
本当は思い出のひとつを持っていたいと思った。けれど、あの指輪や靴には彼の誠意や愛情が詰まっている。彼を裏切ってしまった光莉には持っている資格はないのだ。
シンデレラの魔法は解けた。
光莉は元の世界に戻らなければならない。
現実を生きるために、一日も早くここから離れなくてはいけない。
それでも――。
律樹の姿を目に焼きつけておきたくて、門の前で佇んでいる彼のことが気になって、一度だけ振り返った。
(律樹さん……りっちゃん)
離れたくない。愛してる。側にいたい。この期に及んで迷いが生まれてしまいそうになり、光莉は振り切るようにまっすぐに前を向いた。
行先の詳細は告げず、しばらく友だちのところに身を寄せるとだけ言っておいた。律樹にも修蔵にも常盤家の人間には誰にも知られるわけにはいかない。
光莉は常盤家から出たあと、しばらく歩いて様子を確認し、離れた路地裏で待機していた颯太に合流した。
誰かに尾行されていないか、盗聴器やGPSの類がついていないか、颯太が念入りにチェックをしてくれた。
万が一に追手を仕向けられたときのことを考え、東京から出る手段に電車やバスを利用せず、颯太の親方の名義で借りたレンタカーを使わせてもらうことになった。
目的の場所までは、東京から車でだいたい六時間程あれば到着するが、修蔵の動きが読めない今は、なるべく遠回りをしながら、数日かけて向かうようにした方がいいという颯太の提案に乗ることにした。
「本当にいいんだね?」
出発する直前、颯太が尋ねてきた。