さよならしたはずが、極上御曹司はウブな幼馴染を赤ちゃんごと切愛で満たす
「これから先はどうするの。ずっと、雲隠れっていうわけにもいかないんじゃない」
「そうだね。早苗さんの息子さん夫婦にも赤ちゃんが生まれるみたいなの。安定期に入ったばかりって言ってたわ。そうなるとますます家族を差しおいて御厄介になるわけにもいかないし……」
光莉は言葉に詰まった。出産が近づくにつれ、考えていたことでもあった。一生、隠れて暮らすわけにはいかない。一方、光莉が働いている間にこの子を奪われはしないだろうかという不安がつきまとう。
「今はとにかく無事に出産することだけを考える。これから先、この子を守るためならなんだってするよ」
「一応さ、俺も無関係っていうわけじゃないんだよね」
「え?」
颯太の言っている意味がわからず、光莉は彼の顔を見た。
「その子の父親と俺は、半分は血が繋がっているんだし」
「……うん」
忘れそうになるが、颯太は律樹の異母弟で、光莉の義理の弟で、お腹の子にとっては叔父にあたるのだ。
颯太は枝の折れた向日葵が落ちているのを手に取り、それから光莉に差し出した。
「俺が、その子の父親になってあげようか」
まるで傘をそっとさすように、颯太は言った。
光莉は颯太に律樹を重ねてしまい、一瞬どきりとしたが、すぐに正気に戻る。
「おねえさんをからかうなら、もう少し内容を考えてね」
颯太の口調を真似ながら、光莉はおどけてみせる。しかし颯太は真面目な表情を崩さなかった。
「冗談じゃなくて本気。昔は、亡くなった兄の代わりに弟が奥さんを貰い受けることってよくあったんだよ」
「それは昔の人の話で、第一、あなたのお兄さんは……生きてるでしょう」
「そう、あの人は生きてる。あの人は光莉さんがひとりで苦しんでることすら知らない。それなのに、光莉さんはあの人のことを想いながら、ずっと生きていくの? いつかあの人はあなたのことを忘れて、別の人と結婚して子どもができるかもしれない。でも、あなただけはずっとひとりだなんて。そんなの辛くない?」
母親に育てられて常盤家に引き取られた颯太は母親の辛さを見知ってきたのだろう。きっと、あの頃の母子家庭にあった律樹のように。
光莉は答えられなかった。あの頃の律樹のような想いはさせたくないと思う。
「ひとりじゃないよ。お腹の子がいる。それに、いつか……今は無理だけど、私だっていい人を見つけるよ」
「そうだね。早苗さんの息子さん夫婦にも赤ちゃんが生まれるみたいなの。安定期に入ったばかりって言ってたわ。そうなるとますます家族を差しおいて御厄介になるわけにもいかないし……」
光莉は言葉に詰まった。出産が近づくにつれ、考えていたことでもあった。一生、隠れて暮らすわけにはいかない。一方、光莉が働いている間にこの子を奪われはしないだろうかという不安がつきまとう。
「今はとにかく無事に出産することだけを考える。これから先、この子を守るためならなんだってするよ」
「一応さ、俺も無関係っていうわけじゃないんだよね」
「え?」
颯太の言っている意味がわからず、光莉は彼の顔を見た。
「その子の父親と俺は、半分は血が繋がっているんだし」
「……うん」
忘れそうになるが、颯太は律樹の異母弟で、光莉の義理の弟で、お腹の子にとっては叔父にあたるのだ。
颯太は枝の折れた向日葵が落ちているのを手に取り、それから光莉に差し出した。
「俺が、その子の父親になってあげようか」
まるで傘をそっとさすように、颯太は言った。
光莉は颯太に律樹を重ねてしまい、一瞬どきりとしたが、すぐに正気に戻る。
「おねえさんをからかうなら、もう少し内容を考えてね」
颯太の口調を真似ながら、光莉はおどけてみせる。しかし颯太は真面目な表情を崩さなかった。
「冗談じゃなくて本気。昔は、亡くなった兄の代わりに弟が奥さんを貰い受けることってよくあったんだよ」
「それは昔の人の話で、第一、あなたのお兄さんは……生きてるでしょう」
「そう、あの人は生きてる。あの人は光莉さんがひとりで苦しんでることすら知らない。それなのに、光莉さんはあの人のことを想いながら、ずっと生きていくの? いつかあの人はあなたのことを忘れて、別の人と結婚して子どもができるかもしれない。でも、あなただけはずっとひとりだなんて。そんなの辛くない?」
母親に育てられて常盤家に引き取られた颯太は母親の辛さを見知ってきたのだろう。きっと、あの頃の母子家庭にあった律樹のように。
光莉は答えられなかった。あの頃の律樹のような想いはさせたくないと思う。
「ひとりじゃないよ。お腹の子がいる。それに、いつか……今は無理だけど、私だっていい人を見つけるよ」