さよならしたはずが、極上御曹司はウブな幼馴染を赤ちゃんごと切愛で満たす
言いながら、そんな未来が来るはずがないと、光莉はわかっていた。ずっと忘れられなかった愛する人との子どもをひとりで育てることがどれほど大変かなんてわからない。誰かに頼りたくなる日がきっと来るだろう。けれど、律樹のことしか考えられないのだ。
「本当に? それが、俺じゃダメな理由は……あの人を思い出すから?」
「最初は雰囲気がどこか似てるって思ったことあったけど、律樹さんとは全然違うよ」
久しぶりに律樹の名前を口にした途端、瞳から熱いものが溢れてきた。慌てて手の甲で拭う。
「光莉さん……」
「早く帰らないと。汗が止まらない。目に入ったみたい。染みて痛いよ」
急に抱きしめられ、光莉は目を丸くする。足元に空になったラムネの瓶が転がっていく。ビー玉が陽に煌めいて、ふたりが重なる影を映している。パニックになりかけた光莉は、とっさに颯太の腕を振り払おうとした。
「颯太くん、離して」
「嫌だ」
颯太の腕がきつくしまる。
「嫌だって子どもじゃないんだから」
「ひとりで泣かないって約束しないと離さない。早苗さんに聞いたんだよ。光莉さんがたまにこっそり泣いてるってこと」
「……颯太くん」
颯太のやさしさを感じ、腕をふりほどけなくなる。彼はお腹を圧迫しないようにしながら光莉を抱きしめていた。
途方に暮れそうになる頃、通りかかる人の声にハッとする。
「あらあら、若い夫婦は微笑ましいわねぇ」
光莉はとっさに颯太の胸を押し返した。その拍子にふたりの距離がようやく開いた。
「ち、違います。私たちはそんなんじゃ」
「おや。そうだったのかい。お似合いだったからてっきりそうだと思ったんやけど」
通りすぎていく中年の女性を見送ったあと、光莉はふうっとため息をついた。ただでさえ暑いのに変な汗が流れてしまった。
「光莉さん、茹でだこなの、暑いせいだけじゃないよね」
揶揄するように颯太は言った。
「そうよ。どう考えても、颯太くんのせいでしょ」
「ふうん。少しは意識してくれているわけだ」
「……まだ言ってる。きっと颯太くんは負い目がある気がしてるからよ。前に罪滅ぼしがどうのって言ってたけど、ここに連れてきてもらったし、色々助けてもらった。だから、あれはとっくに帳消しなんだからね」
光莉はそう言い、颯太を振り切るように歩みを早めた。
「本当に? それが、俺じゃダメな理由は……あの人を思い出すから?」
「最初は雰囲気がどこか似てるって思ったことあったけど、律樹さんとは全然違うよ」
久しぶりに律樹の名前を口にした途端、瞳から熱いものが溢れてきた。慌てて手の甲で拭う。
「光莉さん……」
「早く帰らないと。汗が止まらない。目に入ったみたい。染みて痛いよ」
急に抱きしめられ、光莉は目を丸くする。足元に空になったラムネの瓶が転がっていく。ビー玉が陽に煌めいて、ふたりが重なる影を映している。パニックになりかけた光莉は、とっさに颯太の腕を振り払おうとした。
「颯太くん、離して」
「嫌だ」
颯太の腕がきつくしまる。
「嫌だって子どもじゃないんだから」
「ひとりで泣かないって約束しないと離さない。早苗さんに聞いたんだよ。光莉さんがたまにこっそり泣いてるってこと」
「……颯太くん」
颯太のやさしさを感じ、腕をふりほどけなくなる。彼はお腹を圧迫しないようにしながら光莉を抱きしめていた。
途方に暮れそうになる頃、通りかかる人の声にハッとする。
「あらあら、若い夫婦は微笑ましいわねぇ」
光莉はとっさに颯太の胸を押し返した。その拍子にふたりの距離がようやく開いた。
「ち、違います。私たちはそんなんじゃ」
「おや。そうだったのかい。お似合いだったからてっきりそうだと思ったんやけど」
通りすぎていく中年の女性を見送ったあと、光莉はふうっとため息をついた。ただでさえ暑いのに変な汗が流れてしまった。
「光莉さん、茹でだこなの、暑いせいだけじゃないよね」
揶揄するように颯太は言った。
「そうよ。どう考えても、颯太くんのせいでしょ」
「ふうん。少しは意識してくれているわけだ」
「……まだ言ってる。きっと颯太くんは負い目がある気がしてるからよ。前に罪滅ぼしがどうのって言ってたけど、ここに連れてきてもらったし、色々助けてもらった。だから、あれはとっくに帳消しなんだからね」
光莉はそう言い、颯太を振り切るように歩みを早めた。