さよならしたはずが、極上御曹司はウブな幼馴染を赤ちゃんごと切愛で満たす
 律樹はそれよりも壁にかけられた絵や、写真の方に興味をそそられていたようだった。見られて困るようなものはないが、なんだか落ち着かない。
 律樹は葵生を見てどんなふうに感じただろう。自分に似ていると思わなかっただろうか。昨日からずっと鼓動が騒がしい。
「えっと、今、お茶を入れるね。コーヒーの方がいいかな」
 そういう声が上ずってしまう。
 一旦冷静にならなければと思い、そそくさとキッチンに逃げ込もうとしたとき、とっさに律樹の手に腕を掴まれ「……あっ」と声がこぼれた。
 気付いたときには抱きしめられていて、慌てて離れようとするけれど、律樹はびくとも動かなかった。体温と共に律樹の香りが漂う。彼のその匂いに懐かしさを覚え、たちまち胸の奥が騒がしくなっていく。
「律樹さん……」
 離れてほしくて名前を呼びかけたのに、反対に彼の腕がさらにきつくしまった。久しぶりに律樹を直接感じて、息ができなくなるかと思った。
「君にひとり背負わせてごめん」
 律樹の声が震えていた。
 ああ、やっぱり彼は気付いていたのだ、と光莉は察した。伝染するように光莉の身体も震えてきてしまう。
「俺から離れたのは、あの子を守るためだったんだろう?」
 涙がこみ上げてきて、我慢しようと思ったのに無理だった。勝手に嗚咽が漏れてしまう。
「……っ」
 縋りつくようにして光莉が身を預けていると、律樹は髪を撫でて何度も強く抱きしめてくれた。
「ごめん、なさい……ごめんなさい。私……っ」
「俺の方こそ、すぐに気付かずに悪かった。本当はもっと早くこうしたかった。迎えにくるのに随分時間がかかってしまった。どうか許してほしい」
 律樹はそう言うとそっと光莉を離した。
「光莉、もう一度、俺と一緒になってくれないか。今日はそれを言いたくて会いにきたんだ」
 まさかそんなふうに言ってもらえるとは思わず、光莉は目を見開く。
「そんな」
「常盤家のことも会社のことも色々片がついた。もう誰にも邪魔はさせない。君を不幸にしたりしない。あの子と一緒に三人で幸せになりたいんだ」
「……私は、あなたを置いて出ていってしまったのに?」
「君は、守ろうとしてくれたんだ。そうだろ? 色々あったが、今は俺が常盤家の当主を務めている。もう、君を脅かすことはなにもないんだよ」
「でも」
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