さよならしたはずが、極上御曹司はウブな幼馴染を赤ちゃんごと切愛で満たす
 律樹の大きな手が、光莉の形を確かめるように這わされていく。会えなかった月日を埋めるように、情熱を注ぎ込んで。どれほどでも貪欲に迎え入れて。
 お互いが唯一無二の存在であることを刻み込んで。何度でも上り詰めて震えてしまう。
 ああ、ずっとこうしたかった。抱かれたかった。彼の温もりを感じたかった。死ぬほど会いたかった。あなたのことが欲しかった。
 身体のずっと最奥で、律樹の情熱を感じながら、光莉は両手を伸ばして、律樹の頬に触れた。
「愛してる。光莉……っ」
 愛している。
 誰よりも、心から、愛している。
「……律樹さん、愛してるっ」
 ずっと心の中に閉じ込めていた言葉が、余すことなくこぼれていった。
 混沌とした白い世界を彷徨いながら、汗ばんだ重たい身体を受け止め、光莉は浅い呼吸を整える。
 脱力した律樹の重みを身体いっぱいに感じて、信じがたいような夢を見ているような気分だった。

* * *

 幸雄の墓の前で手を合わせたあと、律樹は常盤家の騒動の全容を教えてくれた。
 ニュースに流れた一連の報道の裏側で、律樹が調査をしていたらしい。トップの不祥事により経営陣刷新を発表し、新たに重役ポストについた律樹は常盤グループの信頼回復のために奔走している。律樹は虎視眈々と契機を窺い、諦めていなかったのだ。
 光莉と一緒に幸せになるためには、あのときは準備不足で、引き留めても修蔵の目から逃れられないことを知り、手放すしかなかった。だが、彼は未来を掴むためにずっと動いてくれていた。
 光莉が、葵生のために未来を選んだように、律樹もまた光莉と一緒になれる未来を繋ぐために、一緒の方向に向かっていたのだ。
 修蔵が捕まったあと、麻美と雄介は家を出て行き、使用人達には新しい勤め先を斡旋したらしい。律樹は都内のマンションでひとり暮らしをしているという。
「じゃあ、あのお邸は手放したのね」
「ああ。とはいえ、歴史ある建物だから、これからは迎賓館として活用してもらうつもりでいるよ」
 短い間だったが、律樹と一緒に過ごした邸での思い出を振り返る。怖いことや苦しいこともあったけれど、律樹と再会して想いを結び合った場所でもあった。
 光莉は父の幸雄を亡くし、妊娠に気付いたあとすぐ、東京から石川の輪島市へと移り、葵生が生まれて金沢に戻ってきた。葵生は今年の九月に一歳を迎えた。
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