さよならしたはずが、極上御曹司はウブな幼馴染を赤ちゃんごと切愛で満たす
「口に合わなかったかな。慣れるのは大変だろうが……」
と、律樹が口を開きかけたとき。
「そうじゃないの。気持ちの問題よ。たとえ契約的な結婚だとしても、嫁ぐからには家の人たちとうまくやっていきたい思うじゃない。でも、それ以前の話なんだなって思ったら、少しだけ不安になったの」
光莉は素直に伝えた。
情けない姿はもうとっくに見られている。今さら彼の前で取り繕ったって仕方ない。むしろ、これから光莉が自分の意見を伝えられるのは律樹だけかもしれないのだ。
ここは囚われの箱庭――。
「光莉、これだけは覚えておいてほしい。俺はずっと君の味方だから」
律樹の言葉に、光莉は弾かれたように顔を上げ、信じられない目で彼を見た。
光莉の胡乱な視線を感じたからか、律樹はとっさに口を突いて出てしまったことを悔いているようだった。
「君にどんなふうに思われているかなんて、俺が一番わかっている。君のその顔を見ればね。政略結婚を強いることでしか、君を守れない俺を、心の底から憎んでくれたって構わない」
当然のように従わせたくせに、どうしてそんなふうに苦しそうな顔をするのだろう。
光莉は喉元まで出かかった彼への恨み言をどう消化していいかわからず結局のみ込んでしまう。彼は強引なやり口だったが、それでも光莉を守ってくれたことには違いない。憤りをぶつける相手は、彼ではない気がした。
「私は、今のあなたのことがよくわからない。理解できない部分もあるわ。でも、昔のことがなかったものだともまったくの幻だったとも思わない。ただ、現実を見なくちゃいけないことだけはわかった」
「光莉……」
律樹は何か言葉を選ぼうとしている。彼の瞳の奥に揺らぎが走った。
光莉はすうっと深呼吸をし、肩の荷を下ろす 。
「律樹さん、あなたのことをもっと知りたいと思う。結婚すると決めた以上、今のあなたのことをわからないままでいたくないから」
「君は、そういう人だったな」
ふわりと、柔らかな微笑みを向けられ、光莉は目を奪われた。
一瞬だけ、あの頃のことが蘇り、胸が甘く締めつけられる。
いつか彼を許して、昔のように、彼を心から信頼できる日が来るだろうか。
彼の今を知りたい。その想いがよりいっそう強まるのを感じていた。
「このあとだが、婚姻届けに判を押してくれ。父との約束なんだ」
「……わかった」
と、律樹が口を開きかけたとき。
「そうじゃないの。気持ちの問題よ。たとえ契約的な結婚だとしても、嫁ぐからには家の人たちとうまくやっていきたい思うじゃない。でも、それ以前の話なんだなって思ったら、少しだけ不安になったの」
光莉は素直に伝えた。
情けない姿はもうとっくに見られている。今さら彼の前で取り繕ったって仕方ない。むしろ、これから光莉が自分の意見を伝えられるのは律樹だけかもしれないのだ。
ここは囚われの箱庭――。
「光莉、これだけは覚えておいてほしい。俺はずっと君の味方だから」
律樹の言葉に、光莉は弾かれたように顔を上げ、信じられない目で彼を見た。
光莉の胡乱な視線を感じたからか、律樹はとっさに口を突いて出てしまったことを悔いているようだった。
「君にどんなふうに思われているかなんて、俺が一番わかっている。君のその顔を見ればね。政略結婚を強いることでしか、君を守れない俺を、心の底から憎んでくれたって構わない」
当然のように従わせたくせに、どうしてそんなふうに苦しそうな顔をするのだろう。
光莉は喉元まで出かかった彼への恨み言をどう消化していいかわからず結局のみ込んでしまう。彼は強引なやり口だったが、それでも光莉を守ってくれたことには違いない。憤りをぶつける相手は、彼ではない気がした。
「私は、今のあなたのことがよくわからない。理解できない部分もあるわ。でも、昔のことがなかったものだともまったくの幻だったとも思わない。ただ、現実を見なくちゃいけないことだけはわかった」
「光莉……」
律樹は何か言葉を選ぼうとしている。彼の瞳の奥に揺らぎが走った。
光莉はすうっと深呼吸をし、肩の荷を下ろす 。
「律樹さん、あなたのことをもっと知りたいと思う。結婚すると決めた以上、今のあなたのことをわからないままでいたくないから」
「君は、そういう人だったな」
ふわりと、柔らかな微笑みを向けられ、光莉は目を奪われた。
一瞬だけ、あの頃のことが蘇り、胸が甘く締めつけられる。
いつか彼を許して、昔のように、彼を心から信頼できる日が来るだろうか。
彼の今を知りたい。その想いがよりいっそう強まるのを感じていた。
「このあとだが、婚姻届けに判を押してくれ。父との約束なんだ」
「……わかった」