さよならしたはずが、極上御曹司はウブな幼馴染を赤ちゃんごと切愛で満たす
大事な来客にねだられてしまえば、無下にすることはできない。きらきらとした期待の目で見られ、即座に断るわけにはいかなくなってしまった。
ピアノは弾いたことがない。ピアノのレッスンもするべきだっただろうか。水を差すかもしれないけれど、正直に伝えた方がいいだろうか。
焦っている光莉をよそに、律樹がおもむろにピアノの後方の台に置いてあったヴァイオリンケースを開いた。
「せっかく麗華様が素晴らしいピアノを弾いてくださったのですから、光莉はヴァイオリンを弾いてみたらどうかな」
律樹が目配せをする。光莉はハッとした。
小学生の頃、光莉はヴァイオリン教室に通っていたことがある。少しの間だったけれど、律樹も一緒に習っていた。先生の都合で教室がなくなったあとも、光莉は気に入った曲が弾けるまで練習していたものだった。
「えっと、たしかに、ヴァイオリンの方がいいかもしれませんね」
律樹がヴァイオリンを手渡してくれ、光莉はそっとそれを受けとった。しかし内心は心臓が激しく暴れていた。
学生のとき以来ずっと触れていないのに、すんなりできるとは思えない。
緊張に身を包みながら、光莉は馴染みのある曲をいくつか頭の中に思い浮かべる。やはりクラシック曲はマストだろう。
ちゃんと音が出せるか不安で、手が震えてきてしまう。
「素敵なヴァイオリンね。もしかしてストラディバリウスの中でも最高峰のものではないかしら」
貴美子が感心したように言うと、麗華も釘付けになる。律樹が片目を閉じるので、光莉はつられたように頷く。
ストラディバリウスについては知識だけはある。ヴァイオリンの中の名器といわれるストラディバリウスのヴァイオリンは何億も値が付くことがある最高峰の楽器だ。富豪が老舗楽器商から仕入れる、或いは資産家や公益財団が保有するものをヴァイオリニストに貸し出すらしい。
それほど貴重で高価なものを腕に抱いているという緊張感がさらに追加され、光莉は身震いをした。
当然、習い事で使っていたヴァイオリンはそんな立派なものではない。玩具とまではいかないが、そこそこのものだ。
光莉の頭の中に譜面が自然と浮かんだ。忘れてしまわないように、余計なことはそれ以上考えないようにする。大丈夫。あの曲だったら弾けるはず。落ち着いて、落ち着いて、と心の中で唱えた。
ピアノは弾いたことがない。ピアノのレッスンもするべきだっただろうか。水を差すかもしれないけれど、正直に伝えた方がいいだろうか。
焦っている光莉をよそに、律樹がおもむろにピアノの後方の台に置いてあったヴァイオリンケースを開いた。
「せっかく麗華様が素晴らしいピアノを弾いてくださったのですから、光莉はヴァイオリンを弾いてみたらどうかな」
律樹が目配せをする。光莉はハッとした。
小学生の頃、光莉はヴァイオリン教室に通っていたことがある。少しの間だったけれど、律樹も一緒に習っていた。先生の都合で教室がなくなったあとも、光莉は気に入った曲が弾けるまで練習していたものだった。
「えっと、たしかに、ヴァイオリンの方がいいかもしれませんね」
律樹がヴァイオリンを手渡してくれ、光莉はそっとそれを受けとった。しかし内心は心臓が激しく暴れていた。
学生のとき以来ずっと触れていないのに、すんなりできるとは思えない。
緊張に身を包みながら、光莉は馴染みのある曲をいくつか頭の中に思い浮かべる。やはりクラシック曲はマストだろう。
ちゃんと音が出せるか不安で、手が震えてきてしまう。
「素敵なヴァイオリンね。もしかしてストラディバリウスの中でも最高峰のものではないかしら」
貴美子が感心したように言うと、麗華も釘付けになる。律樹が片目を閉じるので、光莉はつられたように頷く。
ストラディバリウスについては知識だけはある。ヴァイオリンの中の名器といわれるストラディバリウスのヴァイオリンは何億も値が付くことがある最高峰の楽器だ。富豪が老舗楽器商から仕入れる、或いは資産家や公益財団が保有するものをヴァイオリニストに貸し出すらしい。
それほど貴重で高価なものを腕に抱いているという緊張感がさらに追加され、光莉は身震いをした。
当然、習い事で使っていたヴァイオリンはそんな立派なものではない。玩具とまではいかないが、そこそこのものだ。
光莉の頭の中に譜面が自然と浮かんだ。忘れてしまわないように、余計なことはそれ以上考えないようにする。大丈夫。あの曲だったら弾けるはず。落ち着いて、落ち着いて、と心の中で唱えた。