さよならしたはずが、極上御曹司はウブな幼馴染を赤ちゃんごと切愛で満たす
(きっと彼はたくさん傷ついたから……汚れた部分を見ないようにしていた。近寄らないようにしていた)
 小学生の頃は、光莉はいじめられていた律樹を守りたい一心だった。ある種の保護欲や正義感からくるものもあったのかもしれない。彼の傘になり、盾になり、陽だまりになりたかった。特別な存在でいたかった。
 けれど、やがてふたりの関係は逆転する。
 中学生になり、背も伸びて逞しくなった彼が、今度は光莉を守ってくれる人になっていた。友だちと喧嘩したとき、部活でうまくいかなかったとき、ナンパに絡まれたとき、電車で潰されそうになったとき……彼は光莉を励まし、側で支え、いつも守ってくれていた。
 そして、中学一年の冬休み、愛犬が死んでしまって悲しかったとき。
『りっちゃん は、ずっとそばにいてね。いなくならないでね』
『いるよ。ずっと君の側にいる。約束の代わりに、これをあげる』
 律樹はそう言い、光莉にお守りを差し出した。それを見て、光莉は慌ててポケットを探った。光莉も律樹に渡そうと思って持ってきていたのだ。一緒に読んだ本のことを思い浮かべ、同じように友情の証にしたかった。
『御守』
 律樹がくれたのはちゃんとした御守だったけれど、光莉が律樹に渡したのは、『比翼連理』と書かれたお守りだった。そのときは本当の意味は知らなかった。寄り添う二羽の美しい鳥の絵柄の刺繍に惹かれ、寒さで指がかじかむ中、光莉はそのお守りを選んだのだった。
『あのさ、ひかりちゃん、これの意味わかってる?』
 困惑したように律樹が尋ねてきた。目元にかかる色素の薄い髪から戸惑う瞳が見えた。光莉はきょとんとして問い返した。
『ずっと一緒にいられますようにっていう、友情の御守でしょう?』
『まぁ、当たってるけど』
 なぜか律樹の頬が赤くて、いつものように博識な彼にその理由を尋ねたけれど、いつまでたっても教えてもらえなかった。
 傘となり、盾となり、そして陽だまりでいてくれた。彼の側にいることが心地よかった。
 ――そんな律樹のことが好きで、大好きで、いつの間にか光莉は彼に恋をしていたことに気付いた。人生で初めての恋、すなわち初恋だった。
(伝えられないままだったし、あれからすぐ離れ離れになってしまったけど……)
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