さよならしたはずが、極上御曹司はウブな幼馴染を赤ちゃんごと切愛で満たす
あの 御守はどこに仕舞っていただろうか。実家の納戸の奥かもしれない。律樹は覚えているだろうか。まだ持っていてくれるだろうか。それとも、捨てられてしまっただろうか。
無論、今なら意味がわかる。縁結びの御守だっていうこと。比翼連理とはつまり番のことを意味するのだと。
(まさか、こういう形で、本当に夫婦になるなんて……)
線引きをすると決めたはずなのに、未練たらしく思い出してしまうことをどうしてもやめられない。あの頃の記憶は、今の光莉にとっての支えなのだ。だから、迷惑かもしれないけれど、心の中で密かに温めていることくらいは許してほしい。
「光莉?」
律樹が訝しげに尋ねてくる。光莉はハッとして返事をした。
「ぼーっとしちゃってごめんなさい。わかった。着替えるから少しだけ待ってくれる?」
「了解。リビングの方にいるよ」
律樹が微笑む。その表情がとても嬉しそうに見えるのは、光莉の願望がそうさせているのかもしれない。
着替えを終えたあと、光莉はトレンチコートを片手に、律樹を探した。リビングの方にいると言っていたが、どこにも姿が見当たらなかったのだ。
「若奥様」
メイド長の白井に声をかけられ、光莉はやや遅れてうしろを振り向いた。
「律樹様なら、外でお待ちになっておられますよ」
どうやら若奥様というのは光莉のことだったようだ。
「あ、ありがとうございます」
「光莉様、その場合は、わかったわ、で構いません。或いは、ありがとうのひと言だけで結構ですよ」
「は、はい。いえ、ええ。ありがとう」
「結構です。それから、先日お茶会にお越しになった中(なか)村(むら)様から、若奥様にお電話がありましたよ」
「中村様……あ、あの老夫婦かしら」
光莉は足の悪い老夫婦を思い浮かべる。
「一言、御礼を、と。あのときは助かったそうです」
「そうですか。わざわざ……」
自分の行動が無駄ではなく、彼らの助けになったのならよかった、と光莉はあたたかな気持ちになった。嬉しくて頬を緩めると、白井がつられたようにふっと微笑みを浮べたのを見て、光莉は目を丸くした。初めて、白井の笑顔を見た気がする。
「それでは私はこれにて失礼いたします」
白井は一礼し、光莉が立ち去るのを待ってから引き返して行った。
無論、今なら意味がわかる。縁結びの御守だっていうこと。比翼連理とはつまり番のことを意味するのだと。
(まさか、こういう形で、本当に夫婦になるなんて……)
線引きをすると決めたはずなのに、未練たらしく思い出してしまうことをどうしてもやめられない。あの頃の記憶は、今の光莉にとっての支えなのだ。だから、迷惑かもしれないけれど、心の中で密かに温めていることくらいは許してほしい。
「光莉?」
律樹が訝しげに尋ねてくる。光莉はハッとして返事をした。
「ぼーっとしちゃってごめんなさい。わかった。着替えるから少しだけ待ってくれる?」
「了解。リビングの方にいるよ」
律樹が微笑む。その表情がとても嬉しそうに見えるのは、光莉の願望がそうさせているのかもしれない。
着替えを終えたあと、光莉はトレンチコートを片手に、律樹を探した。リビングの方にいると言っていたが、どこにも姿が見当たらなかったのだ。
「若奥様」
メイド長の白井に声をかけられ、光莉はやや遅れてうしろを振り向いた。
「律樹様なら、外でお待ちになっておられますよ」
どうやら若奥様というのは光莉のことだったようだ。
「あ、ありがとうございます」
「光莉様、その場合は、わかったわ、で構いません。或いは、ありがとうのひと言だけで結構ですよ」
「は、はい。いえ、ええ。ありがとう」
「結構です。それから、先日お茶会にお越しになった中(なか)村(むら)様から、若奥様にお電話がありましたよ」
「中村様……あ、あの老夫婦かしら」
光莉は足の悪い老夫婦を思い浮かべる。
「一言、御礼を、と。あのときは助かったそうです」
「そうですか。わざわざ……」
自分の行動が無駄ではなく、彼らの助けになったのならよかった、と光莉はあたたかな気持ちになった。嬉しくて頬を緩めると、白井がつられたようにふっと微笑みを浮べたのを見て、光莉は目を丸くした。初めて、白井の笑顔を見た気がする。
「それでは私はこれにて失礼いたします」
白井は一礼し、光莉が立ち去るのを待ってから引き返して行った。