さよならしたはずが、極上御曹司はウブな幼馴染を赤ちゃんごと切愛で満たす
律樹のやさしさを感じるたびに、ささくれそうになる部分がやさしく包まれて、そこからまた生まれ変われるような気持ちになるから不思議だ。彼の前世は、魔法使いの類なのではないだろうかとすら思ってしまう。
光莉は助手席のドアを開け、律樹の元へと近づく。
気配を感じとったらしい律樹が振り向く。
「悪い。起こしてしまったか」
「ううん。ありがとう。気を遣ってくれたんでしょ」
「途中で起こされると、すっきりしないだろう?」
そういう律樹の隣に、光莉はそっと寄り添った。そして、都会の匂いを改めて感じながら、夜景を眺める。
「さっきまで自然に囲まれていたのに、こうやって夜景とかネオンの光りとか浴びると、ああ、都会に戻ってきたんだって感じするね」
光莉はしみじみと感じながら思ったことをそのまま口にした。
「残念そうだな」
「今まではそうじゃなかったから。金沢では、いつまでも緩やかに流れている場所にいたから」
ふたりの間に沈黙が流れる。けれど、いやな空白ではなかった。
「あんみつ、美味しかったね」
あんみつの味を覚えていたいと言っていた律樹の気持ちが、今になってよくわかる気がした。
「少しは気分転換になったか?」
「めちゃくちゃなった」
光莉は笑顔で応えた。無理に作ることなく、自然と頬が綻んでいく。いい感じに肩の力が抜けた気がする。律樹も満足したように微笑んだ。
「そうだ」と律樹が車の方に戻っていく。光莉は首を傾げつつ、彼の後に続いた。
律樹はトランクを開き、中から紙袋を取り出す。紙袋には懐紙に包まれた何かが入っていた。彼が丁寧にそれを解くと、一足の黒いパンプスが顔を覗かせた。パッと見、見たことのあるデザインだった。
「これ、君に渡しそびれていた」
「あ、もしかして、パーティーのときに失くした片方……」
見覚えのある感じがしたのは気のせいじゃなかった。長く履いた自分の靴はそう忘れるものではないらしい。
「君が慌てて出て行くのが見えた。そのときに偶然拾ったんだ」
「そう、だったんだ。そっか。律樹さんが拾ってくれてたのね」
それも何かの運命だったのではないかと、思わざるを得ない。
「本当は金沢に行ったときに渡すつもりだったんだが……」
律樹は言葉を濁す。その先のことは今は思い出す部分じゃないだろう。
光莉は助手席のドアを開け、律樹の元へと近づく。
気配を感じとったらしい律樹が振り向く。
「悪い。起こしてしまったか」
「ううん。ありがとう。気を遣ってくれたんでしょ」
「途中で起こされると、すっきりしないだろう?」
そういう律樹の隣に、光莉はそっと寄り添った。そして、都会の匂いを改めて感じながら、夜景を眺める。
「さっきまで自然に囲まれていたのに、こうやって夜景とかネオンの光りとか浴びると、ああ、都会に戻ってきたんだって感じするね」
光莉はしみじみと感じながら思ったことをそのまま口にした。
「残念そうだな」
「今まではそうじゃなかったから。金沢では、いつまでも緩やかに流れている場所にいたから」
ふたりの間に沈黙が流れる。けれど、いやな空白ではなかった。
「あんみつ、美味しかったね」
あんみつの味を覚えていたいと言っていた律樹の気持ちが、今になってよくわかる気がした。
「少しは気分転換になったか?」
「めちゃくちゃなった」
光莉は笑顔で応えた。無理に作ることなく、自然と頬が綻んでいく。いい感じに肩の力が抜けた気がする。律樹も満足したように微笑んだ。
「そうだ」と律樹が車の方に戻っていく。光莉は首を傾げつつ、彼の後に続いた。
律樹はトランクを開き、中から紙袋を取り出す。紙袋には懐紙に包まれた何かが入っていた。彼が丁寧にそれを解くと、一足の黒いパンプスが顔を覗かせた。パッと見、見たことのあるデザインだった。
「これ、君に渡しそびれていた」
「あ、もしかして、パーティーのときに失くした片方……」
見覚えのある感じがしたのは気のせいじゃなかった。長く履いた自分の靴はそう忘れるものではないらしい。
「君が慌てて出て行くのが見えた。そのときに偶然拾ったんだ」
「そう、だったんだ。そっか。律樹さんが拾ってくれてたのね」
それも何かの運命だったのではないかと、思わざるを得ない。
「本当は金沢に行ったときに渡すつもりだったんだが……」
律樹は言葉を濁す。その先のことは今は思い出す部分じゃないだろう。