さよならしたはずが、極上御曹司はウブな幼馴染を赤ちゃんごと切愛で満たす
律樹が嬉しそうに微笑む。その笑顔に、光莉も胸がいっぱいになった。
ふと、律樹の視線が別のところへと吸い寄せられる。光莉もその方向を見た。
ブライダル会社の広告の看板があった。
ウエディングドレスとタキシードを着た外国人のカップルが描かれている。ふたりは笑顔で寄り添い、見つめ合っていた。
そういえば、来週には十一月に入る。いい夫婦の日にちなんで結婚式を挙げるカップルが大勢いることだろう。
(結婚式か……)
ウエディングドレスを着る機会はきっと今のままでは訪れないかもしれない。着てみたいと憧れたことはあったし、いつかはそういう日が来るかもしれないと考えたことだってある。
けれど、未来設計をする前に、その理想は遠ざかり、叶わないものになった。
「ふたりだけの結婚式をしないか?」
「え? でも……」
律樹の突然の提案に、光莉は戸惑いながら彼の真意を探る。
山谷食品を助けたければ律樹と結婚すること――それは律樹が持ちかけてきた政略結婚だった。
常盤家当主の修蔵にしてみれば、律樹が跡取りになることが最大の望みであり、そのための条件として光莉との結婚を認めたに過ぎない。一方で律樹は、光莉のために山谷食品を守ることを条件のひとつに組み込んだ。
なぜ律樹は光莉との結婚を条件に含めたのだろうと疑問に思う。律樹に好きだと言われたことはないし、自分から伝えたこともない。
形だけの夫婦だから結婚式も披露宴もさせる必要はない、と当主は考えている。光莉を端から嫁として認める気はないのだ。あまつさえ、家族としての交流を深める気もさらさらないのだろう。初日の挨拶以来、修蔵の姿を見かけることはあってもまったく顔を合わせていない。
義務さえ果たせば当主としては何も文句はないのだろう。麻美のように嫌がらせをするわけではない点では助かるが、いないものとして扱われるのはどうしても寂しい気持ちになってしまう。
何人もの愛人を作って子を孕ませ、その子の中から後継者を選定するくらいなのだから、元々家族への感情が希薄な人なのかもしれない。
何となく気にしていた光莉のことを、律樹は見透かしていたのだろうか。
「結婚式は自分たちの好きにしたらいいと言っていた。ただ大仰にしなければいいだけの話だろう。家のことは気にしなくていい」
「麻美さんがまた何か言ってくるかもしれないよ?」
ふと、律樹の視線が別のところへと吸い寄せられる。光莉もその方向を見た。
ブライダル会社の広告の看板があった。
ウエディングドレスとタキシードを着た外国人のカップルが描かれている。ふたりは笑顔で寄り添い、見つめ合っていた。
そういえば、来週には十一月に入る。いい夫婦の日にちなんで結婚式を挙げるカップルが大勢いることだろう。
(結婚式か……)
ウエディングドレスを着る機会はきっと今のままでは訪れないかもしれない。着てみたいと憧れたことはあったし、いつかはそういう日が来るかもしれないと考えたことだってある。
けれど、未来設計をする前に、その理想は遠ざかり、叶わないものになった。
「ふたりだけの結婚式をしないか?」
「え? でも……」
律樹の突然の提案に、光莉は戸惑いながら彼の真意を探る。
山谷食品を助けたければ律樹と結婚すること――それは律樹が持ちかけてきた政略結婚だった。
常盤家当主の修蔵にしてみれば、律樹が跡取りになることが最大の望みであり、そのための条件として光莉との結婚を認めたに過ぎない。一方で律樹は、光莉のために山谷食品を守ることを条件のひとつに組み込んだ。
なぜ律樹は光莉との結婚を条件に含めたのだろうと疑問に思う。律樹に好きだと言われたことはないし、自分から伝えたこともない。
形だけの夫婦だから結婚式も披露宴もさせる必要はない、と当主は考えている。光莉を端から嫁として認める気はないのだ。あまつさえ、家族としての交流を深める気もさらさらないのだろう。初日の挨拶以来、修蔵の姿を見かけることはあってもまったく顔を合わせていない。
義務さえ果たせば当主としては何も文句はないのだろう。麻美のように嫌がらせをするわけではない点では助かるが、いないものとして扱われるのはどうしても寂しい気持ちになってしまう。
何人もの愛人を作って子を孕ませ、その子の中から後継者を選定するくらいなのだから、元々家族への感情が希薄な人なのかもしれない。
何となく気にしていた光莉のことを、律樹は見透かしていたのだろうか。
「結婚式は自分たちの好きにしたらいいと言っていた。ただ大仰にしなければいいだけの話だろう。家のことは気にしなくていい」
「麻美さんがまた何か言ってくるかもしれないよ?」