さよならしたはずが、極上御曹司はウブな幼馴染を赤ちゃんごと切愛で満たす
薬指にゆっくりはめられていくのを見つめていたら視界が少しだけ揺らいで見えなくなりそうになった。だから、律樹の顔が近づいていたことにすぐには気付けなかった。でもきっと気付けたとして、光莉は拒むことはしなかっただろう。
好きだとか、大切だとか、言葉にすることはない、これはふたりが足並みを揃えるという意味での儀式なのかもしれない。
でも、今はそれでよかった。何より心強い、彼の誠実なギフトに感じたのだ。
風のようにそっと唇が触れ合う。ただそれだけ。誓いのキスの代わりのようだった。
鼓動がゆっくりと早鐘を打ちはじめ、耳のあたりにまでせり上がってくる。
今、外から見たふたりはどんなふうに映っているのだろう。
まるで本当の恋人同士みたいに。結婚を心待ちにしているように映っているかもしれない。
律樹は最初こそ強引に政略結婚を持ちかけてきたけれど、こんなふうに誠心誠意を尽くして、光莉にやさしくしてくれる。
それは今の光莉にとってたったひとつの希望――。
彼さえ側にいてくれれば、この先もずっと頑張っていけるかもしれない。そんなふうに思わせてくれるほど、この夜のことは忘れられない一日として光莉の心に刻まれていったのだった 。
◇6 天獄と地獄
律樹とデートをした日から、光莉にとってふたりの結婚式が新しい目標になった。
最初は、意に染まない結婚だったけれど、律樹との距離が少しずつ近くなっていくにつれ、これから本当の意味での夫婦になっていけたら……と、考えるようにもなっていた。
おかげで常盤家の行事もお稽古ごとも、前ほど義務感が先立つことはなくなった。将来への不安を抱いていた光莉にとって、ひとつの大きな進歩だった。
「最近、随分とごきげんだね、光莉さん」
常盤家に来てもう何十回目になるかわからない生け花の稽古を終えて先生を見送ったあと、裏庭に面した縁側で涼んでいると、颯太が声をかけてきた。
「あなたって、いつも忍者みたいに現れるのね。気配を消すのが得意だったりする?」
あれから、颯太とはこうして一緒に過ごす時間が少しずつ増えていた。
颯太は律樹に気を遣っているのか、律樹と光莉がふたりで一緒にいるときは声をかけてこない。だから光莉も律樹のことはあまり話題に出さないようにしていたのだが。
「それ、素敵だね。あの人にもらったの?」
好きだとか、大切だとか、言葉にすることはない、これはふたりが足並みを揃えるという意味での儀式なのかもしれない。
でも、今はそれでよかった。何より心強い、彼の誠実なギフトに感じたのだ。
風のようにそっと唇が触れ合う。ただそれだけ。誓いのキスの代わりのようだった。
鼓動がゆっくりと早鐘を打ちはじめ、耳のあたりにまでせり上がってくる。
今、外から見たふたりはどんなふうに映っているのだろう。
まるで本当の恋人同士みたいに。結婚を心待ちにしているように映っているかもしれない。
律樹は最初こそ強引に政略結婚を持ちかけてきたけれど、こんなふうに誠心誠意を尽くして、光莉にやさしくしてくれる。
それは今の光莉にとってたったひとつの希望――。
彼さえ側にいてくれれば、この先もずっと頑張っていけるかもしれない。そんなふうに思わせてくれるほど、この夜のことは忘れられない一日として光莉の心に刻まれていったのだった 。
◇6 天獄と地獄
律樹とデートをした日から、光莉にとってふたりの結婚式が新しい目標になった。
最初は、意に染まない結婚だったけれど、律樹との距離が少しずつ近くなっていくにつれ、これから本当の意味での夫婦になっていけたら……と、考えるようにもなっていた。
おかげで常盤家の行事もお稽古ごとも、前ほど義務感が先立つことはなくなった。将来への不安を抱いていた光莉にとって、ひとつの大きな進歩だった。
「最近、随分とごきげんだね、光莉さん」
常盤家に来てもう何十回目になるかわからない生け花の稽古を終えて先生を見送ったあと、裏庭に面した縁側で涼んでいると、颯太が声をかけてきた。
「あなたって、いつも忍者みたいに現れるのね。気配を消すのが得意だったりする?」
あれから、颯太とはこうして一緒に過ごす時間が少しずつ増えていた。
颯太は律樹に気を遣っているのか、律樹と光莉がふたりで一緒にいるときは声をかけてこない。だから光莉も律樹のことはあまり話題に出さないようにしていたのだが。
「それ、素敵だね。あの人にもらったの?」