さよならしたはずが、極上御曹司はウブな幼馴染を赤ちゃんごと切愛で満たす
と言い添えてから、白井は話を続けた。
「実は、奥様は旦那様の度重なる浮気に心を蝕まれておりました。旦那様は奥様に向き合おうとはしませんでした。やがて奥様の心は壊れていき、かつて使用人だった若い男と、ふたりで駆け落ちをしました」
「駆け落ち……」
「世間体や跡継ぎのことを気にした旦那様は奥様に戻ってくることを強いました。連れ戻された奥様は子を身ごもっていましたが、ある日そのまま亡くなられました」
白井は言葉を濁したが、つまりはただ離婚したわけではなく、自殺をしたということだろうか。泥沼の関係そして壮絶な最期を想像し、光莉は自分が直接見たわけでもないその光景に目を伏せたくなった。
「奥様がお腹の子と共に亡くなってしまったことで跡継ぎが望めなくなり、律樹様や雄介様をこの邸に呼び寄せたのです」
それからもうひとり、颯太も……。
愛人の子が三人もこの邸の中にいる。本妻にそんな仕打ちをした挙句、修蔵はどんな気持ちで我が子らとその愛人たちを見ているのだろうか。
光莉が絶句していると、白井はハーブティーを口に含んでから、こちらに視線をよこした。
「私は、ひょっとしたら律樹様と光莉様なら、常盤家の歪(いびつ)さを変えてくださるのではないかと、少しばかり期待しているのです」
「そんな……」
「少し話がすぎたようですね。どうかごゆっくり。私は先に休ませていただきますので」
白井は立ち上がり、それから頭を垂れた。
「白井さん、ありがとう。おやすみなさい」
光莉がそう告げると、白井は微笑みを残し、踵を返した。
光莉はしばらく金木犀の香りに癒されようと、ハーブティーをゆったりと味わった。
金木犀の甘く芳醇な香りが、また懐かしい気持ちを呼び起こさせる。白井の話を聞いたせいか、むしょうに律樹のことが恋しくなってしまった。
自分には律樹がいてくれる。理解をしようとしてくれる彼が側にいることは幸せなことなのだと思う。律樹を想うと、心強かった。
ハーブティーには癒されたけれど、色々な話を聞いてしまったせいで、逆に眠気は吹き飛んでしまった。
部屋に戻ったら、読みかけの本に手をつけようか、そう考えながら食堂を出て、自室まであとちょっとのところ、廊下を曲がろうとしたときだった。
「実は、奥様は旦那様の度重なる浮気に心を蝕まれておりました。旦那様は奥様に向き合おうとはしませんでした。やがて奥様の心は壊れていき、かつて使用人だった若い男と、ふたりで駆け落ちをしました」
「駆け落ち……」
「世間体や跡継ぎのことを気にした旦那様は奥様に戻ってくることを強いました。連れ戻された奥様は子を身ごもっていましたが、ある日そのまま亡くなられました」
白井は言葉を濁したが、つまりはただ離婚したわけではなく、自殺をしたということだろうか。泥沼の関係そして壮絶な最期を想像し、光莉は自分が直接見たわけでもないその光景に目を伏せたくなった。
「奥様がお腹の子と共に亡くなってしまったことで跡継ぎが望めなくなり、律樹様や雄介様をこの邸に呼び寄せたのです」
それからもうひとり、颯太も……。
愛人の子が三人もこの邸の中にいる。本妻にそんな仕打ちをした挙句、修蔵はどんな気持ちで我が子らとその愛人たちを見ているのだろうか。
光莉が絶句していると、白井はハーブティーを口に含んでから、こちらに視線をよこした。
「私は、ひょっとしたら律樹様と光莉様なら、常盤家の歪(いびつ)さを変えてくださるのではないかと、少しばかり期待しているのです」
「そんな……」
「少し話がすぎたようですね。どうかごゆっくり。私は先に休ませていただきますので」
白井は立ち上がり、それから頭を垂れた。
「白井さん、ありがとう。おやすみなさい」
光莉がそう告げると、白井は微笑みを残し、踵を返した。
光莉はしばらく金木犀の香りに癒されようと、ハーブティーをゆったりと味わった。
金木犀の甘く芳醇な香りが、また懐かしい気持ちを呼び起こさせる。白井の話を聞いたせいか、むしょうに律樹のことが恋しくなってしまった。
自分には律樹がいてくれる。理解をしようとしてくれる彼が側にいることは幸せなことなのだと思う。律樹を想うと、心強かった。
ハーブティーには癒されたけれど、色々な話を聞いてしまったせいで、逆に眠気は吹き飛んでしまった。
部屋に戻ったら、読みかけの本に手をつけようか、そう考えながら食堂を出て、自室まであとちょっとのところ、廊下を曲がろうとしたときだった。