さよならしたはずが、極上御曹司はウブな幼馴染を赤ちゃんごと切愛で満たす
 いきなり誰かに腕を掴まれ、光莉は驚いて悲鳴を上げようとしたが、誰かの無骨な手に口元を塞がれ、息さえもうまく吸えなかった。
 光莉の目の前にはスマホの画像が突き付けられていた。その画像は、颯太に抱きかかえられている光莉の姿だった。今日の昼、閉じ込められた部屋から助けられたときのものだ。
(だ、れ……)
 光莉は身動きのとれないまま、視線だけを後方へ動かす。生温かい息が耳に触れてぞわぞわと総毛立つ。気持ち悪くて仕方なかった。
「大人しくこっちにくるんだ」
 荒々しい息遣いに混じったその低い声にハッとする。聞き覚えがあったからだ。だいたいこの邸の警備を考えれば、不審者なんて簡単に入れるはずがない。
 なんとか振り切ろうと身じろぎするものの、羽織い絞め状態のままでは為すすべなく、ずるずると引きずられて連れていかれてしまう。
「んんっ」
 息ができなくて目がちかちかしてきた。犯人は乱暴に部屋のドアを開く。薄暗い中だが、光莉が今使っている部屋だった。
 そのまま意識が遠ざかりそうになる中、もつれるようにベッドに押し倒され、光莉は恐怖に顔をひきつらせた。
 やっと手を離され、光莉は必死に喘いだ。心臓は激しく爆発しそうな音を立てている。
 ぼやけた視界の中、犯人の顔を見てやっぱり、と光莉は納得した。
「どう、して、あなたが……」
 犯人は雄介だった。
 彼の眼鏡の奥が卑猥な目つきでぎらついている。
「お仕置きが必要だろうと思ってね」
 雄介はそう言い、光莉を無理矢理組み敷く。
「いやっ」
「君、随分と颯太と親しくしているみたいじゃないか。こそこそと会ってるようだけど、どんなふうにあの男を誘惑したんだ?」
「颯太くんは助けてくれただけです。降りて、放してください!」
「兄さんとはまだ関係を持たないのはどうしてだい? 君たちが夜をともにしている様子はないようだけど?」
 なぜそのことを知っているのか、ストーカーされているような気分になりぞわぞわした。それに、律樹との情事をちらつかせられ、光莉はカッとなる。
「関係ないじゃないですか」
「兄さんが触れてくれなくて満たされない。だから、彼とこっそり逢瀬を交わしてるんじゃないか?」
「違います!」
「ちょうどいいじゃないか。相手をしてやるよ。君だって飢えているんだろう。なあ?」
「いやっ」
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