さよならしたはずが、極上御曹司はウブな幼馴染を赤ちゃんごと切愛で満たす
 律樹以外の人に触られたくない。光莉は死に物狂いで身をよじり、雄介の身体を叩いて防御する。いやらしく服を弄ろうとするその手に恐怖を抱いたそのとき、パッと電気がついた。
「何してるんだ! やめろ!」
 その声は、律樹だった。
「律樹さ……」
 光莉が助けを求める前に彼はそばにやってきて、雄介から庇うように抱きしめてくれた。光莉は必死に律樹にしがみついた。
「一体なんの騒ぎ――」
 麻美が部屋に入ってくるなり悲鳴を上げる。
「なんてことなの。呆れるわ。人の夫を誘惑するなんて!」
「麻美さん、誤解です。私は何も……っ」
「何も? その状態で信じられるわけがないわ」
「雄介さん、ちゃんと説明してください」
「ふん。見たままだろう。そっちから誘ってきたんだ」
 冷ややかな表情で雄介は言い放った。
「そんなことしていません!」
 光莉は即座に声を上げた。
「光莉さんの方からに決まってるわ。光莉さんが、私の夫に迫ろうとしていたのよ」
 麻美は光莉を睨む。彼女はなんとかして光莉の弱みを握ろうとしているのだろう。そもそも猫の件も雄介の件も、どう考えても不自然だ。
「光莉は否定している。俺は信じるよ。光莉がそんなことをするはずがない」
「じゃあ、この状況はなんだというの」
「知らない。彼女に誘われたんだ」
 雄介はその一点張りだった。
「ほら、夫がそう言っているでしょう。証拠に写真に撮らせてもらうわ」
 光莉の乱れた姿を撮影しようとする麻美を遮るように律樹が立ちはだかった。
「やめろ。勝手なことは許さない」
「お義兄さんは知らないのよ。騙されているんだわ。庭師の颯太にも色仕掛けしてたようじゃないの」
「それは勘違いです」
「あの子が言ってたわよ。あなたに好意を持たれてるのかもって。思わせぶりなことをしたんじゃないのかしら?」
「もしそうだったらきちんと誤解を解きます」
「気を付けてもらわないと。醜聞は、お義兄さんの株を落とすことになるのよ」
 つまり麻美の目的はそういうことなのだろう。光莉を陥れ、あわよくば律樹の評判を下げたいのだ。
 雄介は麻美との夫婦仲がよくないのは本当かもしれないが、今のこの状況を考えると、彼らはグルになっていたのかもしれない。そんなふうに疑心暗鬼になってしまう。
「律樹さん、自分から迫ったわけじゃないわ。押し倒されただけよ」
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