さよならしたはずが、極上御曹司はウブな幼馴染を赤ちゃんごと切愛で満たす
相変らず修蔵とは会話をしていない。光莉は彼らの邪魔をしないように通りすぎようとしたのだが。
風の音が止んだせいか、急にふたりの話し声が鮮明に聞こえた。
盗み聞きしてはいけないと思いながらも、嫌でも届く彼らの言葉に不意に引っかかるものを覚え、光莉は彼らの会話に耳をそばだてた。
「今後は安泰と見ていいでしょうか。律樹様にとって光莉さんの存在は想定していたよりも大きいようですね……山谷食品も律樹様が建て直しをして上方に向かっています」
「ふん、当主としての素質があるかどうかはこれからの話だがな。律樹は思いの外優秀だった。あれは経営者にも向いている。私は確信したよ。私の跡継ぎは律樹しかあり得ない」
山谷食品の建て直しはうまくいっている。その言葉に光莉は安堵した。ぶっきらぼうな言い方ではあるけれど、修蔵が律樹に期待しているらしいことにも。
自然と笑みが浮かび、そっとその場を立ち去ろうとする。が、続く言葉に再び足を止めた。
「だが他の者はだめだ、才覚というものがない。そろそろ雄介も処遇を考えねばな、役に立たない人間をいつまでも遊ばせておくわけにはいかない。犠牲はつきもの、子は盤上のコマ、不要になれば弾き、新しい代わりを用意すればいい……とね」
修蔵の声がぐっと低くなり、不穏な空気が流れる。
「あらかじめ山谷食品に目をつけていて正解でしたね」
(目をつけていた……?)
秘書の言葉に悪寒が走る。修蔵が続けた。
「どんな人間にも必ず弱みはある。思いどおりにコマを動かすにはそこを握ることだ。そのためにわざわざやつが執着している女の父親が経営する山谷食品に圧力をかけていたのだ。私は端から 山谷食品になど期待はしていない。あれもコマに過ぎないからな。仕方なく遊ばせてやっているが不採算部門になる前に頃合いで手を引かせろ」
「かしこまりました」
「最高のコマが手に入った以上、こちらのもの。さて、今後のことを考えれば、当主の妻はもっと賢い者の方がいいだろう。いくつか候補を上げておいてくれ」
「……光莉さんのことはどうしましょう?」
風の音が止んだせいか、急にふたりの話し声が鮮明に聞こえた。
盗み聞きしてはいけないと思いながらも、嫌でも届く彼らの言葉に不意に引っかかるものを覚え、光莉は彼らの会話に耳をそばだてた。
「今後は安泰と見ていいでしょうか。律樹様にとって光莉さんの存在は想定していたよりも大きいようですね……山谷食品も律樹様が建て直しをして上方に向かっています」
「ふん、当主としての素質があるかどうかはこれからの話だがな。律樹は思いの外優秀だった。あれは経営者にも向いている。私は確信したよ。私の跡継ぎは律樹しかあり得ない」
山谷食品の建て直しはうまくいっている。その言葉に光莉は安堵した。ぶっきらぼうな言い方ではあるけれど、修蔵が律樹に期待しているらしいことにも。
自然と笑みが浮かび、そっとその場を立ち去ろうとする。が、続く言葉に再び足を止めた。
「だが他の者はだめだ、才覚というものがない。そろそろ雄介も処遇を考えねばな、役に立たない人間をいつまでも遊ばせておくわけにはいかない。犠牲はつきもの、子は盤上のコマ、不要になれば弾き、新しい代わりを用意すればいい……とね」
修蔵の声がぐっと低くなり、不穏な空気が流れる。
「あらかじめ山谷食品に目をつけていて正解でしたね」
(目をつけていた……?)
秘書の言葉に悪寒が走る。修蔵が続けた。
「どんな人間にも必ず弱みはある。思いどおりにコマを動かすにはそこを握ることだ。そのためにわざわざやつが執着している女の父親が経営する山谷食品に圧力をかけていたのだ。私は端から 山谷食品になど期待はしていない。あれもコマに過ぎないからな。仕方なく遊ばせてやっているが不採算部門になる前に頃合いで手を引かせろ」
「かしこまりました」
「最高のコマが手に入った以上、こちらのもの。さて、今後のことを考えれば、当主の妻はもっと賢い者の方がいいだろう。いくつか候補を上げておいてくれ」
「……光莉さんのことはどうしましょう?」