さよならしたはずが、極上御曹司はウブな幼馴染を赤ちゃんごと切愛で満たす
「頃合いを見て邸からは出ていってもらう。ただし、無理に引き離すな。律樹があの女に執着を残さないように、女の方から出ていかせろ。子供のひとりくらい産ませてからでもいいがな。使えるコマは多い方がいい。もし、邪魔だてをしようものなら、大事にしているものから容赦なく潰せ」
彼らは一体なんの話をしているのだろう。
光莉はたちまち背筋にぞわりと悪寒が走るのを感じていた。
政略結婚を伴う交渉の件は、律樹が修蔵に持ちかけたものとばかり思っていた。
『俺の方から条件を出した。父の後を継ぐ代わりに、山谷食品を守ること、社長の娘である君と結婚すること、そのふたつを、ね』
政略結婚の話を出されたとき、光莉は彼からそう説明を受けた。しかし修蔵は律樹よりも一手先をいっていたのだ。今の修蔵と秘書の会話から察するに、修蔵は律樹に執着している。律樹を跡継ぎにするため、彼の弱みである山谷食品を陥れた――。
(そんな……)
川岸から経営状況を詳しく聞いたことがあったが、不自然なくらい急に融資がストップすることがあったらしい。
(まさかそれも……?)
光莉は愕然と立ちすくむ。寒さと恐怖が交互にこみ上げてきて身体ががたがたと震えだす。
幸雄が思いつめるきっかけになったのは……あのとき憎むべきだったのは、律樹ではなく律樹の父親である常盤家の当主・常盤修蔵だったのだ。
光莉はショックのあまりに過呼吸を起こしかけていた。凍りついてその場から動けなくなりそうだった足を必死に漕ぐようにして駆け出した。踏み板が軋む音で光莉の存在に気付いた人間がいたことを知ることもなく――。
(どうして……私は考えが及ばなかったの)
今すぐにここから出て行きたい。背筋に嫌悪感がわきあがってきて吐き気がする。使用人たちの姿が見えると、監視の目が向けられているような気がして、すべてが自分の敵に見えた。
『光莉、これだけは覚えておいてほしい。俺はずっと君の味方だから』
そう言ってくれた律樹の顔が思い浮かんだ。律樹に会いたい。とっさに足が動いた。けれど、同時に父の辛そうな表情が浮かんできた。律樹と光莉が無関係だったなら、そもそも山谷食品や幸雄が追い詰められることはなかったのではないだろうか。
光莉が真実を知ったと修蔵が気付いたら。そのことを律樹に告げたと知られたら。
彼らは一体なんの話をしているのだろう。
光莉はたちまち背筋にぞわりと悪寒が走るのを感じていた。
政略結婚を伴う交渉の件は、律樹が修蔵に持ちかけたものとばかり思っていた。
『俺の方から条件を出した。父の後を継ぐ代わりに、山谷食品を守ること、社長の娘である君と結婚すること、そのふたつを、ね』
政略結婚の話を出されたとき、光莉は彼からそう説明を受けた。しかし修蔵は律樹よりも一手先をいっていたのだ。今の修蔵と秘書の会話から察するに、修蔵は律樹に執着している。律樹を跡継ぎにするため、彼の弱みである山谷食品を陥れた――。
(そんな……)
川岸から経営状況を詳しく聞いたことがあったが、不自然なくらい急に融資がストップすることがあったらしい。
(まさかそれも……?)
光莉は愕然と立ちすくむ。寒さと恐怖が交互にこみ上げてきて身体ががたがたと震えだす。
幸雄が思いつめるきっかけになったのは……あのとき憎むべきだったのは、律樹ではなく律樹の父親である常盤家の当主・常盤修蔵だったのだ。
光莉はショックのあまりに過呼吸を起こしかけていた。凍りついてその場から動けなくなりそうだった足を必死に漕ぐようにして駆け出した。踏み板が軋む音で光莉の存在に気付いた人間がいたことを知ることもなく――。
(どうして……私は考えが及ばなかったの)
今すぐにここから出て行きたい。背筋に嫌悪感がわきあがってきて吐き気がする。使用人たちの姿が見えると、監視の目が向けられているような気がして、すべてが自分の敵に見えた。
『光莉、これだけは覚えておいてほしい。俺はずっと君の味方だから』
そう言ってくれた律樹の顔が思い浮かんだ。律樹に会いたい。とっさに足が動いた。けれど、同時に父の辛そうな表情が浮かんできた。律樹と光莉が無関係だったなら、そもそも山谷食品や幸雄が追い詰められることはなかったのではないだろうか。
光莉が真実を知ったと修蔵が気付いたら。そのことを律樹に告げたと知られたら。