さよならしたはずが、極上御曹司はウブな幼馴染を赤ちゃんごと切愛で満たす
「半分は正解。聞いただろ、当主はあの人の妻の座(あなたの場所)をあけて欲しいって。閉じ込めておくかどうかはあなた次第だよ」
 光莉を出ていかせるためにこんなバカげたことをしたのか。修蔵は光莉が話を立ち聞きしていたことに気付いていたのだ。
「あの人に助けを求めようだなんて思わない方がいい。光莉さんが邸から逃げようとしなければ、監視だけで済むよ。それから、 万が一、あの人に余計なことを喋れば、あなただけじゃなくて、あの人もただでは済まないだろうからね。当主を甘く見ると痛い目に遭うよ」
「ひどい。律樹さんは約束をきちんと守ったのに」
「さぁ。僕に言われても」
 颯太が憐れむように片眉を上げた。
「まあ、この画像をあの人に送りつけた方がずっと傷は深そうだよね。あなたのことをあれだけ溺愛していれば」
 見てきたと言わんばかりの舐め回すような視線に羞恥心をいたずらに煽られ、光莉は唇を噛んだ。
「最低」
「いい? 画像データはとっくに共有済みだ。あなたが何かしようものなら、あなたの父親にこれを送りつける。父親はショックを受けるだろうね。結婚して幸せなんて真っ赤な嘘で、潰されそうな会社と引き換えに、娘はこんなところに虐げられているんだって知るんだから。どんな気持ちになるだろうね」
「……っ」
 父の心配そうな声や別れ際の寂しそうな表情を思い出して、胸が押しつぶされそうになる。なんのために嘘をついてここへきたのか。これが光莉の守り方だと思った。父が守ってきた山谷食品を守るために。屈したくないからこそのんだ条件だったのに。
 理不尽な目にあっても、気持ちだけは負けないように、律樹と一緒に未来を拓こうと新しい目標を抱きはじめていた。それは甘い夢だったのだろうか。
 光莉の内心を読むように颯太は言った。
「光莉さんは甘すぎるよ。この敷地に足を踏み入れた瞬間から家畜なんだよ、俺たちは。少しでも甘い汁を啜ったなら、死ぬまでずっと利用されるか、惨たらしく捨てられるだけだ。夢を見るだけ無駄さ」
 颯太は吐き捨てるように言ったあと、光莉の顎を指先で持ち上げた。
「あなたのことは気に入ってたから本当に乱暴する気までは起こらなかったんだけど、ちょっとくらいは気持ちよくしてあげてもいいよ。この際、本当にヤッたかどうかなんて確かめようがないしね」
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