風と共に去らなかった夫になぜか溺愛されています
☆☆☆

 ブレア領は国境に面していることもあり、岩肌激しい山々に囲まれていた。

「グロリア嬢。迎えにいけなくて申し訳なかった」

 と、顔を合わせ、開口一番にそう言われた。相手はもちろんブレア伯。確か名前は、ウォルター・ブレア。

「いえ。今の状況を鑑みれば当然のこと。それよりも、私を受け入れてくださったことに心より感謝を申し上げます」

「いや。その言葉は私の方から言わせていただきたい。私の求婚を受け入れてくれてありがとう。とても嬉しい」

 あら、とグロリアは思った。二十九歳とは聞いていたけれど、こうやって笑ってみれば、あと五歳くらいは若く見えると。
 色素の薄い金色の髪に、切れ長の目。『風凪』ではわりと重要人物であったのに、挿絵はなかった。

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