王子は香水姫を逃さない
 日が翳ってきたので、戻ることにした。別れ際、抱きしめられた。
 「皇太子に笑いかけるなよ。この印が消える前にまた連絡する。」
 胸元を撫でながら囁かれた。

 私は、アーサーの言っていたことが気になってしまって、ここ数日落ち着かなかった。
 それに比べ、エリンはとっても元気だった。

 何しろ、遠乗りに行っていた間は、キースと二人きりで楽しかったようだ。
 「で、キースとは両思いになったのかしら?」
 「お嬢様ったら、またその話ですか?」

 赤く上気した頬で恥ずかしそうに話すエリン。だって、手を握られたとか言ってたのは聞いたのよ。
 その後、サラに呼ばれてうやむやになってしまった。
 
 「模範試合に参加するっていってました。良かったら、その、お嬢様と一緒に見学へ来られるといいなと言われて……」
 なるほどね。だから、花束を優勝者に渡しましょうとかサラに言ってたのね。全くもう。こういうときはすごい行動力。
 ま、人のことは言えませんけど。私もどうしたら謁見式に潜り込めるかずっと考えていた。
 王妃様へ謁見式に商品をプレゼントに行くとか。

 でも、そんな企みは必要なくなったのである。なんと、式に招待されてしまった。
 それもどうしてなのかよくわからないけど、皇太子から見に来てほしいという連絡が三日前にあった。
 とりあえず、王族の方からのご招待は断れる立場ではないので、伺う旨お返事した。だから、エリンも行けるというわけだ。
 手ぶらでいくのは気が引けるので、エリンの考え通り、花束をいくつか作り、お持ちする予定で準備をした。
 
< 52 / 92 >

この作品をシェア

pagetop