もう一度あなたに恋したときの処方箋
すっかり体調が戻ったので、退院したその足で私は美容院へ行った。
これまで毛先を揃えるくらいだったが、今回は肩先で揺れるくらいの長さにし、ゆるくパーマをかけた。
翌日は日曜日だったから、エリちゃんと買い物に行って何枚か明るい色や柄もののブラウスやスカートを買った。
エリちゃんは突然の私の変化になにか言いたそうにしていたが、いつも通りに接してくれた。
そして、月曜日。
いつもの紺のパンツスーツにグレイッシュなピンクのブラウスを合わせてみた。
メガネも外して、うんと背筋を伸ばして会社に向かう。
「おはようございます」
事業部に入るとき、いつもより大きな声で挨拶をしてみた。
「おはよう」
「おはようございまーす」
いつもと変わらない朝だ。
ほとんどの社員は私の小さな変化を気にも留めないだろう。
それでも私にとっては新しい朝だ。清々しい気持ちさえする。
その日は仕事の上ではなんの変化もなく、マイペースで過ごすことができた。
ひとつだけ大きく違ったのは、高木次長がものすごく私を構ってくるのだ。
「体調は? 大丈夫か?」
朝一番に声をかけられたと思ったら、十時頃には「今日は無理するなよ」と言われた。
仕事の用件以外に「昼は一緒に出掛けないか?」と、ひとこと追加で話しかけてくる。
しかも、声のトーンや表情がいつものクールな高木さんと違いすぎる。
これまで会社で見たこともない高木さんの様子に私は戸惑うしかなかった。
高木さんの甘い雰囲気と私の外見が少し変わったこととの相乗効果か、周りからの注目度が半端ない。
『課長が壊れた』と、隣の席の後輩の田村君が呟くのが聞こえた。
でも私は聞こえなかったフリをして、じっとパソコン画面だけを見ていた。