もう一度あなたに恋したときの処方箋


高木さんは予告通り、昼休憩に入るタイミングで誘いにきてくれた。

事業本部内の女子社員からの視線が怖いけど、デスクで押し問答するわけにもいかなくて高木さんのあとについて会社を出た。

彼が連れて行ってくれたのは、関西風のうどんの店だった。

「胃に優しい食べ物の方がいいかと思って」

照れくさそうにメニューを見せてくれた。高木さんの意外な一面を見た気がする。
気配りのできる人だとは思っていたが、シャイなところもあるんだ。

(ああ、この人が好きだ)

私の胸に、じんわりと『好き』という言葉が浮かんできた。
あの夏の夜に大嫌いになって、二度と好きになんてなるもんかと硬く決意したはずだったのに。

「ごちそうさまでした。美味しかったです」

「食欲もあるみたいで、安心したよ」

あっという間に食事を終えて店を出てから、ふたりでのんびり会社に向かう。
いつかよりも並んで歩けるし、ずいぶんリラックスした気分だ。

「君をタクシーに乗せる時に、あんまり軽いから驚いたんだ」

タクシーに乗せてもらった時の記憶はなかった。
『軽い』なんて言われると、どういう状況だったんだろうと急に気になってきた。

「あ、ありがとうございました。もう大丈夫です」



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