もう一度あなたに恋したときの処方箋
「よかった。君に触れられた」
「高木さん」
柔らかい抱擁だけど、あんなにも嫌だった男性の体温も匂いも気にならない。
逆に、苛立っていた気持ちが落ち着いて安らいだ気持になってくる。
(高木さんが好きって言ってくれた)
ただ憧れていた学生時代とは違う、確かな重みを持って高木さんは私を抱きしめてくれている。
***
鞠子の背を、髪を、自分の手で撫でている。柔らかな感触、爽やかなフローラルの香り。
どのくらいそうしていたのか、鞠子がゆっくり顔を上げた。
ピンクの頬と潤んだ大きな瞳が憲一の自制心を奪おうとする。
(今日はここまでにしなければ……)
やっと自分の手の中に収まったんだ。
これ以上を望んだらデリケートな彼女には負担が大きいだろう。
(これからは忍耐だな)
手と目をぎゅっと握って、憲一は雑念を払う。
「そういえば岡田部長のやらかしたことって、祖母や姉を呼んだことだったんですか?」
ふと思い出したように鞠子が話し出したので、憲一も覚悟を決めた。
「我社のレセプションに君のご家族を招待してるのは伝えたね」
「はい。招待客の名簿には名前がなかったのに呼ばれるなんて……交流事業にどちらの企業も名前があるのは知っていました。なにかあったんでしょうか?」
さすがに鞠子の仕事は完璧だから、状況はキチンと把握している。