もう一度あなたに恋したときの処方箋
俺たちは手を繋いだまま、ゆっくり坂道を歩き出した。
「例の噂の件で、岡田部長が気を回してくれたんだ」
鞠子も恥ずかしそうだが、俺だって自分の噂の話をするのは照れくさい。
「はい」
うっすらと頬をピンクに染めたまま鞠子は俯いた。
「君のご家族に、その、ご挨拶をするのにいいタイミングじゃないかって。吉日にはいいことを重ねるものらしいよ」
部長に言われた言葉のまま、鞠子に説明した。
「はい?」
やはり鞠子にも伝わらなかった。
「つまり、レセプションの席で、おめでたい話をしろってことらしい」
「は?」
彼女はわかっていないようなので、繋いでいた手の力を緩めて憲一は足を止めた。
ゆっくり鞠子と向き合うと、なるべくわかりやすい言葉で話す。
「君のご家族に、結婚のご挨拶をしろってさ」
「え?」
「わかった?」
鞠子は憲一の顔を見上げたまま固まっている。そして目をパチパチとしばたかせた。
「今、高木さん、結婚っておっしゃいました?」
「ああ」