イケメン検事の一途な愛


「時間ちょうだい」
「待てる時間は無いと思うよ?」
「え?」
「3日後、授賞式でしょ、……俺ら」
「っ……」

そうだ。
釜山国際映画祭の授賞式に出席する予定だ。
最悪なことに、この男と。

明日の便で釜山入りする予定だったのをすっかり忘れてた。
ネットが炎上してる間、国内にいないことは有り難いが、この男と同じレッドカーペットを歩くかと思うと腸が煮えくり返りそうだ。

「言いたいことは分かったわ」
「さすが、みーな。物分かりがよくて助かる」
「金輪際、アンタとは共演しないから」
「フッ、強がるのも今のうちだけだよ」

電話を切って、コップ1杯の水を一気飲みする。
朝から胃もたれしそうだ。

志田とのやり取りを山ちゃんに説明して、事務所へと急いだ。

*****

「状況は把握した。弁護士と法務部、それと広報管理部に対処させるから安心しろ」
「うん。……お父さん、ごめんね」
「湊が謝ることじゃないだろ」
「でも……」
「それより、久我君に連絡しなくて平気なのか?心配してると思うぞ?」
「あっ」

水曜日の今日は出勤日。
既に8時を過ぎているから、ネットやテレビを観ていたとすれば知ってるはず。
でも、普段からテレビは観ないって言ってたからまだ知らないかもしれない。

就業時間内に電話を掛けるのは気が引ける。
仕事の邪魔は出来ないから、メールで内容を伝えておくことにした。

『お仕事、お疲れさま。あのね、報告しなくちゃならないことがあって。先日、撮影所の控室で話した、もりで突かれた話を共演者の俳優に聞かれてしまったようで。その人に聖苑にまで尾行されて、両親が放火で亡くなった話も全部聞かれてしまったの。でね、その俳優の志田淳平って人との熱愛報道が出てるけど、ゴシップだから!気にしないでね。本当にごめんね。また連絡します』

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