イケメン検事の一途な愛


「何が食べたい?」
「好き嫌いはないので、何でも」
「アレルギーもない?」
「あ、あります。桃だけなんですけど……」
「桃?……インプット完了」
「へ?」
「来栖 湊は桃が食べれないって記憶した」
「………フフッ、久我さん面白い人ですね」
「そう?職場の人間には『死神』って陰で呼ばれてるけど」
「え?……死神ですか?」
「ん」
「裁判で負け知らずとかですか?」
「いや、負けたことはあるよ」
「じゃあ、何で?」
「仕事で一切の妥協をしない主義だからかな」
「………なるほど」
「被害者の心の傷は、例え死刑判決が下ったとしても直ぐには癒えるものじゃないし。どんなに証拠を集めても、思ってた結果とは限らないしね」

言葉の端々に真面目な人だと窺うことが出来る。
きっと、納得するまで自分を追い込むタイプなんだろうな。
垣間見えた彼の素顔が自分と重ね合う部分があって、ほんの少し親近感が湧いた。

「変な意味で取らないで欲しいんだけど」
「………はい」
「うちで食べる?」
「はい?」
「ホント、変な意味じゃなくて。外で食べたらまた撮られるんじゃないかと」
「あ~なるほど」
「仕事に支障をきたすだろうし、良ければ……の話なんだけどね」
「私は構いませんよ」
「えっ、いいの?」

私の言葉で彼はウインカーを出し、車は路側帯に停車した。

「会って数回の男を信用しちゃダメでしょ」

片手をハンドルに乗せ、もう片方の手は肘掛けに乗せている彼。
助手席の方に少し体を向け、小首を傾げながら妖美な視線を向けて来た。

< 32 / 142 >

この作品をシェア

pagetop