イケメン検事の一途な愛

ショップ店員に彼が持っていたアウターを指差し『この商品を買って行った男性のコーデに合うものを』とお願いした。
だから、リンクコーデに仕上がったのだが…。

エレベーターを降り、彼の部屋の前に到着した。

「久我さんは、今日は水玉柄を取り入れてないんですね」

私と違い、彼のインナーは黒色のものだが、ドット柄ではない。

ピッピッピッピッピッピッと暗証番号の入力音が響く。
解除を知らせる音が鳴り、彼がドアノブに手を掛けた。

玄関ドアを手で押さえ、中へどうぞと小首を傾げながら目で合図する彼。

「お邪魔します」

コンクリート打ちっぱなし仕様のシンプルでスタイリッシュなモノトーンカラーの部屋らしく…。
その洗練された空間に足を踏み入れ、ドアが閉まった、次の瞬間。

「着てるよ」
「ふぇっ？」

コンクリートの壁に押し当てられ、彼は壁に手をつき間近で見下ろす。
突然のアクションに思考がついて行かない。

ドラマや映画でよくあるシーン。
壁ドンだ。

何度となく体験してるはずなのに、体が金縛りに遭ったみたいに動かない。

ドラマや映画で何度となく経験していても、あれは事前に起こることが分かっているから。
脳内がしっかりとその後のアクションを理解して反応する。
けれど、事前に知らされてない今。
完全に許容量を超えてバグってしまったようで…。

怪しい光を宿した瞳に捕らわれ、視線を逸らすことすら出来ない。
そんな私を楽しむかのように不敵に微笑み、ゆっくりと耳元に口元を寄せそっと囁く。

「見たい？」