イケメン検事の一途な愛


脳より先に心がドキッと反応を示す。

ドラマで演じる時もきゅんとすることはある。
それこそ、画面偏差値が高いイケメン俳優から、役とはいえ甘く囁かれたら心が反応しないはずが無い。

けれど、向こうもプロ。
監督からのカットがかかれば、別人と化す。
それは勿論私も同じで。

カメラが回っていない時は、心が鉄の塊になったかのように反応しなくなる。
幾度となく共演した俳優さんやモデルさんから口説かれたこともあるが、恋愛感情を抱いたことは一度もない。

友達として、知人として付き合うなら構わないけど。
恋だの愛だの囁き合うような関係を作りたいとも思わない。

売れたい、モテたい、注目を浴びたいといった感情に支配された共演者に、売名行為で扱われたことは星の数。

『来栖 湊の男』と取り上げられるだけで、この業界での地位が一気に浮上するらしい。

馬鹿らしい。
そんな肩書、何の価値もないのに。

見える範囲に水玉柄は見当たらない。
だとすると、残る場所は下着の部分しかない。

「フッ、どこ想像してんの?」

脳が勝手に分析しただけ。
なのに、本人の意思とは関係なく、勝手に頬が紅潮する。

視線を泳がせた、その時。
ピンポーンッ。
チャイムが鳴った。

「注文したのが届いたようだ」

彼は私の腕を掴み足早にリビングへと連れて行く。
そして、インターホンの解除ボタンを押した。
程なくして到着した夕食。

「温かいうちに食べようか」
「………はい」

彼は何事もなかったように袋から容器を取り出した。

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