イケメン検事の一途な愛
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「ハッ……」
暗闇の中、悲鳴のような声。
一筋の明かりを頼りに覗いたその先に……。
「気が付きました?凄い汗…」
少し離れた場所にあるソファに腰かけていた山ちゃんが駆け寄り、私の顔を覗き込む。
「寝汗を掻いただけだから」
「本当に?どこか痛い所とかは?」
「………大丈夫」
震える手に力をぎゅっと込めて、山ちゃんに心配掛けないようにその場をやり過ごす。
「社長が暫く休むようにと。スケジュールを変更しておきました」
「……ありがと」
「脳の検査も異常なしだったんですが、過労なので点滴を打った方が回復が早いと。数日入院して療養することになってますから」
「………ん」
額に滲む汗を拭いてくれる。
そんな彼女に気付かれないように、必死に動悸を堪えて。
「今何時?」
「今ですか?えっと……21時半過ぎです」
「もうそんな時間なのね。お水ある?」
「あります!」
手渡されたミネラルウォーターを口に含み、気を落ち着かせる。
けれど、中々動悸は治まりそうになくて。
「もう遅いから帰って休んで」
「でも……」
「過労なんでしょ?なら、休めば大丈夫だから」
「…はい」
「山ちゃんもたまにはゆっくり休んで」
「ありがとうございます。あっ、そうだ。久我検事覚えてます?」
「………ん」
「久我検事のお父様が担当医なんですよ」
「………そうなんだ」
変更になったスケジュールの一覧表をベッドテーブルの上に置き、彼女は自宅へと帰って行った。
既に思い出の一部になっていた人。
女優としてではなく、素の自分を見てくれた人。
名前を聞いて、一瞬動悸が治まった。