イケメン検事の一途な愛
静寂に包まれる室内。
加湿器の機械音が響く中、封印されていた記憶が蘇る。
途端に呼吸が浅くなる。
息苦しくて胸が痛い。
夢だと思いたいのに、あまりにも鮮明過ぎるその光景に消えていた過去が繋がった。
瞼を閉じても涙は止まらず。
瞼の裏にまでくっきりとあの日の光景。
思い出したくても思い出せなかった記憶。
色んな検査をして、カウンセリングまでしたのに取り戻せなかった記憶が。
こんな風にして思い出すだなんて……。
父が商社のバイヤーをしていたこともあり、物心ついた時には海外を転々とする生活を送っていた。
母方の祖母が病に倒れ、看病する為に帰国したのが10歳の時。
その当時の記憶が徐々に蘇る。
次々と断片的に蘇る記憶。
けれど、それらはそんなに重要じゃない。
震えが止まらない手を必死に握りしめて、あの日の記憶を整理し始めた。
***
父親が会社の仕事仲間を連れて帰宅したあの日。
仕事のことで随分長い時間話し合っていた。
当時まだ13歳ということもあって、先に布団に入った私は、悲鳴のような声が聞こえ目を覚ました。
薄暗い部屋から一筋の明かりを頼りにドアの隙間から覗いた光景は、両親が包丁のようなもので刺された一部始終だ。
東南アジア地域を統括するバイヤーだった父は仕事のトラブルで言い争い、何か所も刺された。
その場にいた母も刺され倒れた。
言い争う会話と顔からして、その男は外国人。
そして、部屋に火をつけ私を連れ去った。