イケメン検事の一途な愛
渋谷駅に程近いビルで起こった殺人事件。
殆ど証拠調べは終わっている。
近藤に現場を見せるために来ただけ。
だから手短に済ませた俺は、大使館が立ち並ぶ通りを渋谷駅へと向かうように歩く。
すると、ビルの谷間から見えた建物。
数か月ぶりに見たその建物はライトアップされ、無機質な外壁が幻想的に見える。
あの子が転校して来て、よくこの辺を案内した。
海外暮らしが長かった彼女は、見るもの全てが新鮮だといつも大きな瞳を輝かせていた。
そんな彼女は天体観測をしたことが無いと言い、ここへ何度も連れて来たんだ。
発展途上国の国を転々とした生活をしていた彼女。
だから、プラネタリウムというものの存在を知らなかった。
当時、いじめに遭っていた俺を元気付けるのに『一緒に見に行こう』とよく誘ってくれた。
街を案内するという建前で、俺と彼女はデートのような時間を過ごした。
きっと彼女は何とも思ってなかったはず。
恋心を抱いていたのは俺だけで。
誰にでも優しかった子だから、人気者だったし。
今行き会っても、きっと俺のことなんて覚えてないだろう。
最終の公演が19時から。
素早くチケットを購入して座席へと急いだ。
*****
閉館を知らせる音楽が響く中、見送るスタッフを横目に外へと出る。
まだ小雨が降っていた。
傘を差し、通りへ出る階段を下りた所で振り返る。
あの子と何度も待ち合わせをした、この場所が一番好きで……。
ライトアップされたドームを見上げ、思い出の余韻に浸っていた、その時。
視界にあの日と同じように桜色の傘を差した人が立っていた。