イケメン検事の一途な愛


グラスに注いだワインをグイっと飲み干す。

酔いたくても簡単に酔えるようなものじゃないらしい。
夕食の時も今も。
結構な量を飲んでるのに、全然酔えてない。
多少なりともお酒の力を借りたいのに。

風になびき、少し乱れる髪を耳に掛ける彼女。
俺の視線が気になるのか。
その指先は共衿部分に滑らせるように這わせて。

そんな彼女を真っすぐ見つめて……。

「彼氏にするなら、検察官と医師、それと弁護士、どれがいい?」

彼女はどれを選ぶだろうか?
検事のイメージが強いから検察官か?
それとも、家業の話をしたらか医師を選ぶだろうか?
さりげなく『彼氏』というキーワードを盛り込んで質問してみた。

収入面を考えたら医師か弁護士。
今後も女優を続けていくなら彼女をサポートするのに医師か弁護士の方が断然役に立つ。

総合的に考えても『検察官』でいることにメリットを感じなくなっていた。

黙り込んだ彼女。
視線を泳がせ、必死に考えている様子。

「そんなに悩まなくても……」
「えっと、……その」
「……ん」

手が宙を舞っている。
そんな仕草も可愛くて、思わずその手を掴んだ。

「3択じゃ厳しい?その他ってのを追加してもいいよ」
「え?あ、じゃあ………」

彼女はゆっくりと視線を持ち上げ、俺の肩に寄り添うように顔を乗せた。

「『久我 柾』という人物が彼氏なら無職でもっ」
「っ……」

何だ、これ。
告白したつもりが逆に王手を打たれたような。

「本気で言ってんの?」
「………ん」
「フッ」

完敗だ。
答えが可愛すぎるって。

「後悔してもしらないからな」
「しなっんッ」

言い返そうと口をほんの少し開けた彼女の唇をそっと塞いだ。

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