イケメン検事の一途な愛
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「一段落したら、検事辞めようかな」
「え?」
部屋に戻った俺らはテラスのソファーに座り、ワインを飲みながら他愛ない話をしている。
明後日から仕事に復帰するという彼女の今後の予定を聞いたりして。
不意に感じる、人生を生きるスピード感の違いを。
俺は15年前の事件に憑りつかれたかのように生きて、未だに現実味が無い。
事件の当事者なのに、彼女は『今』を必死に生きている。
検察官という仕事が嫌いなわけじゃない。
だけど、探し求めていた彼女と再会したことで、方向性を見失いつつある今。
『28歳』という年齢を考えても、軌道修正するなら早い方がいい。
「俺さ、検察官してるけど、医大出なんだよね」
「…………え?」
「祖父が経営している病院を来年あたりに父が継ぐくことになってて。元々俺も将来は家業を継ごうかと思ってたし。検察官になることを反対されて、一応医学部は出てるし、医師免許も持ってるんだよね」
隣で唖然とする彼女。
検察官をしてるから、普通なら法学部を出て検察官になったと思うよな。
「検察官になる条件で『医師免許』取るって親と約束したからさ」
「………」
「で、高校卒業後に司法修習を1年して、翌年に医大に入学して」
「………スケールが大きすぎて」
「フッ、だよな。普通に考えたらイカれてるとしか思えないよな」
「……うん。でも、昔から物凄く頭は良かったから、納得かな」
こくこくと頷く彼女は、自己完結したようで急に羨望のまなざしを向けて来た。
「で、転職もアリかな?とか考えてて」
「………そうなんだ」