離婚予定の契約妻ですが、クールな御曹司に溺愛されて極甘懐妊しました
 今まで何度も肌は重ねてきたが、こんなに性急に求められるのは初めてだ。
 こんな獣のような目で射抜かれたのも……いや、初めて抱かれた夜も彼はこんな目をしていたかもしれない。

 鼓動を高鳴らせる純玲の服は彼に次々と脱がされていく。
 いつも理性的で冷静な彼らしくない、もどかしげな手つきだ。
 でも純玲は嬉しかった。

 こうしていると本当に自分を愛しい女として求めてくれているように錯覚できるから。
 もっと熱い瞳で見つめて欲しいと思ってしまう。

 彼が自分を大切にしてくれているのは今までの言動で十分分かっている。
 でも根底にあるのは妹に向けるような親愛の情。
 それをこの契約結婚で“夫婦”という器に無理やり嵌めこんでしまった歪さに彼も気づいているのかもしれない。
 だから自分を必要だと言ってくれるし、少なくとも2年間はこうして求めてくれるのだ。“夫婦”の形を保つために。

「……私もです。泰雅さん」

(私も少しでも長く、あなたと一緒にいたい)

 純玲は今できる精一杯の言葉を返し、覆いかぶさる夫に身を寄せ、手を伸ばし彼の髪を撫でる。
 肩口で泰雅が、息を詰まらせる気配がした。
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