離婚予定の契約妻ですが、クールな御曹司に溺愛されて極甘懐妊しました
 挙式に選んだ会場は泰雅と再会した日に利用したホテルのチャペルだ。
 高層階のワンフロアで仕度から挙式、会食まで出来るというのも利点だったし自宅に近く交通の便がいいこともあるが、なによりふたりの夫婦として時間が始まった場所だからという思いが強かった。

 派手なことはしたくないという純玲の意図を汲み、招待客はごく親しい人たちに絞ってある。

「体は大丈夫か? 少しでも辛くなったらすぐに言ってくれ」
 言いながら彼はクッションを純玲の腰の後ろに入れて座りやすくしてくれる。

 夫は相変わらず優しい。
 妊娠がわかってからは優しさに過保護も加わった気がする。
 常に妻の体調に目を光らせているし、妊娠や子育てについて色々調べていて、検診も毎回同行し積極的に医師に質問している。ヘタをすると本人より妊婦のことに詳しい気がする。

「はい。ありがとうございます」

「純玲、また敬語になってる」

 咎めるように言われてしまったと言い直す。

「あ……ごめんなさ……ごめん、ね?」
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