離婚予定の契約妻ですが、クールな御曹司に溺愛されて極甘懐妊しました
 よっぽど業務が立て込んでいるのだろう。
『お仕事がんばってください。肇さんが落ち着いたらゆっくり会えればいいから』と言ったものの、毎日そんな忙しいと倒れてしまわないかと彼の体調が気になる。

(お仕事の邪魔になったらいけないけど、差し入れくらい良いかな)
 彼の職場と総務部は違うフロアなので、会おうとすると出向いていかなければならない。今までは遠慮していたけど、定時後だしこの後、彼の様子を見にいってみようと考える。

(下のお店で肇さんの好きなコーヒーを買っていってあげようかな)
 肇の喜ぶ顔を想像すると自然と顔がほころんだ。

 すべての会議室のチェックを終えた純玲が最後の“ニューデリー”を出ると奥の会議室専用の備品倉庫の方から女性の声が聞こえてきた。
 倉庫と言っても扉は無く、奥まったエリアの狭い空間だ。こんな時間にこんな所に用事がある人がいるのだろうかと思わず耳を澄ましてしまう。

「ねぇ……今日も残業だったんじゃないんだっけ?」
 鼻にかかったこの声はよく知っている。

(……瑠美(るみ)ちゃん?)
 声の主は小野寺瑠美。純玲の父の弟の娘で純玲とは従姉妹にあたる。
 2つ年下の彼女は今年百田に入社した新人で、純玲と同じく総務部に配属されていた。
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