離婚予定の契約妻ですが、クールな御曹司に溺愛されて極甘懐妊しました
 とはいえ、純玲としてもいつも大人で動じない彼が、自分を抱く時は余裕のない表情になるのが嬉しくて拒むことはできない。

 そもそも耳元で『純玲、いいか?』なんて色気全開の切ない声で言われたら、泰雅の声にからきし弱い純玲が抗えるはずがないのだ。

 夫は自分以上に忙しく疲れているはずなのに、相変わらず自分より早く起きてジョギングし、朝食を準備し爽やかに出かけていく。なぜだ解せないと思いつつ、純玲は栄養バランスが整った美味しい朝食を頂き、体力を回復させるのだった。

 15階でエレベーターを降りる。泰雅には受付で申し出てくれれば迎えに行くと言われていた。

「当事務所にご用ですか?」
 
 案内板に従って廊下の奥にある受付に向かおうとすると、同じエレベーターから降りたスーツ姿の若い男性に声を掛けられ足が止まる。

 背が高く身体はガッチリしていて大きい。髪の毛も短く切りそろえているが、たれ気味の目が優しく見える体育会系の男性だ。自分と年齢は同じくらい。ここの事務所の職員だろうか。

「はい、お約束してまして……あの?」

 純玲は失礼があってはいけないと思いつつ、背筋をしゃんと伸ばして言う。
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