俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない
「えっ、あの、いいんですか?」
ちらりと振り返ると、智花さんが唇を噛みしめて立ち尽くしている。視線が合い、睨まれているような気がしてそっと逸らした。
「放っておけ。先にケンカを吹っかけてきたのは向こうだ。彼女はああいうきつい性格なんだよ」
「じゃあやっぱりあの方が……」
「神名先生の娘だ。俺とのやり取りを見てわかっただろ。俺たちは気が合わない」
だんだんと喧嘩口調になっていくふたりを見てヒヤヒヤした。
幸也さんが智花さんのことをあまりよく思っていないことはすぐに伝わってきたけれど、たぶん智花さんはそこまで幸也さんのことを嫌いではないと思う。むしろ、好きなのかもしれない。
私のことを悪く言ったり睨みつけてきたり、どちらかというと嫉妬していじけているように感じた。
「せっかくのデートに水をさされたな」
隣を歩いている幸也さんがムスッとした表情でため息をこぼす。でも、すぐに感情を切り替えたようで、いつも通りに戻った彼が腕時計に視線を落とした。
「まだ少し時間があるが、夕食にレストランを予約しているんだ」
「えっ」
「芙美に喜んでもらえそうな店を探したから、楽しみにしておけよ」
予定では買い物だけをして帰るはずだった。
以前、慣れた店にしか行かないと言っていたのに、私とのディナーのために探してくれたのだろうか。