俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない
「あっ、早瀬くんだ。おーい」
突然、未華子先生がどこかに向かって大きく手を振った。
その名字を聞いた途端、胸がトクンと甘く高鳴る。
未華子先生の視線の先を辿ると、青色のスクラブの上に白衣を羽織った男性医師の姿があり、その手には昼食ののったトレーを持っている。おそらく彼もこれからお昼休憩なのだろう。
心臓血管外科医の早瀬幸也先生。未華子先生と同じ三十六歳で、ふたりは同じ医学部の出身。さらには幼馴染という関係でもあるそうだ。
そんな早瀬先生に私は一年ほど前から片想いをしている。
「早瀬くん、ここ空いてるよー」
未華子先生が左手で隣の席を指差しながら、こっちこっちと右手で手招きをしている。
それを見た早瀬先生は一瞬だけ嫌そうな顔をして別の席を探す素振りを見せたものの、空いていなかったのか仕方なさそうにこちらに向かって歩いて来た。
彼が近付いてくるにつれて私の鼓動が速くなる。そわそわしてしまい、持っている箸を落としそうになったところで、未華子先生の隣に早瀬先生が腰を下ろした。
彼がテーブルに置いたトレーには温かいうどんの入ったお椀がのっている。