壊れるほどに愛さないで
「じゃあ、やっぱり美織の話し相手兼ねて、一緒に行くよ」

「ダメだよ……もうすぐ、大事なプレゼンがあるって言ってたでしょ」 

友也は、医療機器メーカーの営業マンをしている。確か、もうすぐ、大型老人ホームに納品する医療機器のプレゼンが、近いと話していたのを思い出した。

「そう?じゃあ、僕の書斎の本棚から小説貸してあげるよ」 

「おすすめは?」

「そうだな、命吹山(いぶきやま)山荘殺人事件かな」

「あ!東川圭吾(ひがしがわけいご)先生のドラマ化したやつ?」

「そう、名探偵の美織には、おすすめだよ」

私も友也もミステリー小説が好きで、よく、大学生時代も互いに読み終わった、おすすめのミステリー小説を交換した。

「他にも宮野(みやの)先生のとかもあるし、あとで見てみて。一緒に行けない僕の代わりに、お好きなのどうぞ」

友也は、模範的な二重瞼を細めながら、ご馳走様と立ち上がる。空のプレートを台所に置いてから、友也は洗面台に向かったかと思えば、あっという間にスーツに着替えて、ネクタイを結んだ。

「今日の晩御飯何がいい?」

友也が、ダイニングテーブルに座ったままの私を覗き込んだ。本来なら平日に友也の家に泊まることはないのだが、今日は特別な日だから。
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