壊れるほどに愛さないで
美織に、恋人がいるのは知っていたはずなのに、美織から、恋人の話を聞けば、何故だが、心が落ち着かない。

美織をこのまま、帰したくなくなってくる。
俺の手元に、おいておきたくなる。
この気持ちが、何なのか分からない。

ただ、こんな風に誰かに興味を持つことなど、もう二度とないと思っていたのに、俺は、隣の美織から、ひと時も目が離せない。

「着いた」 

俺は、アパートの駐車場に営業車を停めると、美織と並んで歩き出す。

「雪斗の家……本当に、私の家のすぐ近くだったんだね」

「な、ビックリしたけど」

今朝、美織を営業車に乗せてアパートを出たときに、美織が、俺のアパート前の景色を見て、驚いていた。

理由は、俺と美織のアパートが、目と鼻の先ほどの距離だったからだ。

「此処だよな?」 

俺は、焼き鳥屋に向かいながら、自宅アパート前の道をわざと一本手前に曲がって、美織のマンションの前を通り過ぎていく。

「あ、うん、此処だよ」

美織の指差しした先には、白い外壁の4階建てのアパートが見える。エントランスには、『安堂ハイツ』と書かれたプレートが掲げられていた。
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