壊れるほどに愛さないで
見れば、開いた郵便受けから大量の写真が、コンクリートの地面に散らばっている。

「え……これ……」

全て、私の写真だ。どれも目線はこちらを向いていない。隠し撮りの写真だ。

「何だよっ……これっ」 

雪斗が、しゃがむと、慌てて拾い集めていく。私は、足元に力が入らなくなって、途端に小さく震えてくる。

「俺ん()から出る時と、営業所前までの美織の写真だ……」

ふいに忘れている記憶が、引っ張られる。

ーーーー『やめて!』

ーーーー『来ないで!』

(誰?……私?)

見えない恐怖で、心臓は音を立てて、呼吸は苦しくなる。

「雪斗……怖いっ……」 

「美織っ!」

雪斗が、写真をスラックスのポケットに突っ込むと崩れそうになった、私を抱きとめた。

「はぁ……はっ……」

「美織、息ゆっくりして、大丈夫だから!俺、何処にもいかないから!」

こんなに頻繁に記憶発作を起こした事など、今までなかった。

「雪……斗……」

「大丈夫だよ。美織は、何にも心配しなくていいから」

「ごめ、なさ……迷惑……ばっかり」

「迷惑だなんて思ってないから」

私は、雪斗のジャケットの裾をぎゅうっと握りしめていた。雪斗の鼓動に合わせて、ゆっくり呼吸を繰り返す。雪斗の匂いに顔を埋めれば、すぐに雪斗が、私の髪を梳くように撫でて、優しく背中に触れた。


「何してるっ!」

よく知っている声が、響いて、呼吸が落ち着いたばかりの私は、雪斗の腕の中でビクンと震えた。
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