壊れるほどに愛さないで
「よしっ、ラスト」

俺は、転勤で越してきたマンションで荷解きをしていた。最後の引っ越し荷物の段ボールをカッターで、開くと、備え付けの本棚にアルバムの束を立てていく。

「お、懐かし」

表紙には、マジックで、4年前の日付と共に待野雪斗(まちのゆきと)と右肩上がりの癖字で書かれた自分の名前が記載されている。 

「俺の字って変わんねぇな」

つい、開いて見てしまうと、結局最後まで見てしまうと分かっていながら、俺は、久しぶりにそのアルバムを開けた。大学の時の写真同好会で自分で撮影した、思い出の写真達だ。

俺は、主に季節の植物や花々を撮影するのが好きだった。その時、自分の感じた、瞬間的な思いや、残しておきたい空間を切り取ることで、永遠に写真の中でそれらは生き続ける。

写真の中の風景は、いつまで経っても色褪せず、変わらない。

時の流れに従って、変わっていくのは、俺だけだ。

「いや、変わってないな……」

俺はアルバムを閉じると、本棚に立て、また段ボールに手を伸ばした。

「……あ……」

写真同好会で撮った写真を収めている、アルバムの背表紙は、淡いベージュばかりだが、最後に段ボールの底にあったアルバムだけ、背表紙は白だ。

俺は、背表紙に『Y&M』と彼女の筆跡で書かれたそれを、そっと開いた。開くのは4年ぶりだろう。とても、開く気になれなかったから。
彼女を見れば、想いが溢れて苦しくて堪らなくなるから。

「白いコスモス……好きだったよな」

写真の中の彼女は、いつまでもコスモスを見ながら幸せそうな笑顔をこちらに向けている。

「もう丸3年か……」



ーーーーピンポン、ピンポン。
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