壊れるほどに愛さないで
友也を見送り、リビングの時計を見上げれば、病院の診察予約時間までに、まだ2時間ある。私は、洗濯機を回すと、コーヒーを注ぎ、ダイニングテーブルの椅子に腰掛けた。

「橘美織か……」

声に出すと、なんだか、むず痒くて恥ずかしくなる。

友也とも交際も4年目に入る。昨年あたりから、友也の口から結婚についての話もチラホラ出ていた。

「早いなぁ」

お気に入りの白のマグカップ片手に、木製チェストの上の写真達を眺めた。

二人で毎年いくコスモス畑だ。赤、ピンク、茶、白、色とりどりのコスモスが咲き乱れる中で、私は、特に白いコスモスに心を惹かれた。

秋にさく、雪のように白い花弁が、風に揺れれば、何故だが、心がきゅっとなって、目がはなせなくなる。

「今年も友也と見に行けたらいいな……」

独り言を呟きながら、コスモス畑で撮った写真の隣に並べて置いてある、今よりも若い私と友也の写真に、私は視線をスライドさせた。

「ふふ……懐かしいな」


交際を始めたばかりの頃に、友也から誘われて、大学の図書館の中庭にある、ピラミッド型のモニュメントの前で撮った、初めてのツーショットの写真だ。恥ずかしそうにしながらも、友也に顔を寄せる、私が写っている。 

「あの時……どうして友也は私に声を掛けたんだろう」

あの時、友也が声をかけてくれなかったら、見つけてくれなかったら、今、私の隣に友也はいなかったから。

< 17 / 301 >

この作品をシェア

pagetop