壊れるほどに愛さないで
僕が、美野里に初めて出会ったのは、小学六年生の時だった。母が、心臓の病気で亡くなってから三年。父が、突然、職場の看護師と再婚すると聞いた時は驚いた。あまり公にはしたくないという、相手の女性の意向を汲んで夫婦別姓を名乗っており、知っているのは身内の限られた、ごく僅かの人達だけだった。
その父の再婚相手の女性の名が、秋宮麻里。麻里にも心臓の持病があり、別れた前夫との間に、娘が一人いた。
『初めまして、秋宮美野里です。宜しくね』
『初め、まして。橘友也です』
『緊張しないでよ、君のお姉ちゃんになったんだから』
そういって笑う美野里に、僕は一目で恋に落ちていた。それまで、恋などとは、無縁だと思っていた僕は、美野里と暮らし始めてすぐに美野里を義姉ではなく、常に異性として意識していた。でも、美野里が僕にむける眼差しは、初めて出会った時から、ずっと『弟』だった。
僕は、淡い恋心を伝えられないまま、僕は叶うことのない戸籍上の姉に恋をしたまま大人になった。
そして、父が、麻里と再婚して、5年後のことだった。
『……麻里っ……』
父の懸命な治療にも関わらず、麻里は、心臓の持病が、悪化して亡くなった。冷たくなった麻里に縋りついて泣く父の姿が、母が死んだ時と重なった。
父は、心臓外科医でありながら、二度も愛する女性を救えなかった後悔から、この日を境に笑わなくなった。
『ともくんっ……お母さんが……』
最愛の母を亡くした美野里も、ひどく取り乱し、食事も摂らずに泣き続けた。僕は、美野里に何一つしてあげることができずに、ただただ、泣きじゃくる背中を摩ることしかなかった。
自分が、ちっぽけな人間で、本当に無力だと感じた地獄のような時間だった。
その父の再婚相手の女性の名が、秋宮麻里。麻里にも心臓の持病があり、別れた前夫との間に、娘が一人いた。
『初めまして、秋宮美野里です。宜しくね』
『初め、まして。橘友也です』
『緊張しないでよ、君のお姉ちゃんになったんだから』
そういって笑う美野里に、僕は一目で恋に落ちていた。それまで、恋などとは、無縁だと思っていた僕は、美野里と暮らし始めてすぐに美野里を義姉ではなく、常に異性として意識していた。でも、美野里が僕にむける眼差しは、初めて出会った時から、ずっと『弟』だった。
僕は、淡い恋心を伝えられないまま、僕は叶うことのない戸籍上の姉に恋をしたまま大人になった。
そして、父が、麻里と再婚して、5年後のことだった。
『……麻里っ……』
父の懸命な治療にも関わらず、麻里は、心臓の持病が、悪化して亡くなった。冷たくなった麻里に縋りついて泣く父の姿が、母が死んだ時と重なった。
父は、心臓外科医でありながら、二度も愛する女性を救えなかった後悔から、この日を境に笑わなくなった。
『ともくんっ……お母さんが……』
最愛の母を亡くした美野里も、ひどく取り乱し、食事も摂らずに泣き続けた。僕は、美野里に何一つしてあげることができずに、ただただ、泣きじゃくる背中を摩ることしかなかった。
自分が、ちっぽけな人間で、本当に無力だと感じた地獄のような時間だった。